第5話

「本を盗もうとした人は初めてよ!」

「じゃあこいつが金盗んでたら良かったのかい?!他の奴らみたいにトルの周りにいるアタシらを密猟しようとすればすぐに追い出したんだろうね

?!」

「ふふ…そうかもね!」にこっと笑いながら小さな布製のポシェットを私の腹の上に置く

「ありがとう」

「ずいぶん小さいバッグ…拳ひとつ分しか入らないんじゃないかしら…もしかしてこんな装備で冒険をしていたの?」

「じゃあ…トルの拳を…入れてごらん」そう言って、毒の作用で痙攣する手でポシェットの口を大きく開く。

「?」トルがシーツや私の胸をぽすぽすと叩くので、包帯まみれの手で冷たいトルの手を取りポシェットへ誘導する。

トルが顔を赤らめている、左目は爪痕傷のおかげで閉じていて、元々の視力も悪いので、右目もぼんやりとしているようだが、よくここまで一人で暮らしてきたものだ。竜たちが手伝ったのだろうか?興味深いな…

トルはごそごそとポシェットの中に手を入れるとそのまますっぽり肩まで入った「えっ!これすごいですね!形は小さいのに、どんどん手が中に入っていきます!」

「無限にものを入れられる訳ではないんだけど、割と容量があってね、重宝しているんだ」

「へー!」

「悪いんだけど、その中に本が入っていないか?それを出して欲しい。」

たくさんありますね…と言って、トルは5冊の本を出す

「その中に一つ…金属の本留めがついている本があると思う…それと、あと鉛筆も取り出してほしい」

「はい!どうぞ!」

毛布の上にぽすんと置かれた本に震える手で竜についての事を書いていく

トルは目を瞑ってレイジの筆記音に耳を傾けていた。

 

そしてある程度書き終わると、レイジはトルの方を向き、「手袋を外してくれないか?」と訊く

「昨日チラリと見えて、気のせいかと思ったのだが、さっきトルに触れて確信した」

「…!」

トルが恥ずかしそうに、するりと手袋を外すと…そこには金属の義手がぴかっと光っていた。

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