異能情報生命体仮説

政治派閥

◤ 概要 ◢

この資料は「異能情報生命体仮説」シリーズの世界観を説明するものです。

ご興味がありましたら

同作者の「統合異能捜査局の日々について」をお読みいただければ大変嬉しく思います。

https://kakuyomu.jp/works/16818622176388744296

※ 異能モノなのに全く戦闘しません。異能が存在する社会をリアル重視で描いています。

　 あらかじめご了承ください。

◤ 維持均衡派 ◢

維持均衡派は、異能共生社会において最も広範な支持基盤を持つ政治勢力であり、既存の制度や秩序の維持を最優先とする保守的かつ現実主義的立場を取る。異能申告制度・加害可能性評価・倫理教育といった基本制度の枠組みを肯定し、社会の安定と予測可能性を重視している。

この派閥は「異能は制御されることで初めて共生できる」という立場をとり、異能の制度外利用に強い警戒心を示す。保安局・管理局・捜査局など官僚機構との結びつきが強く、星宮家のような中立技術家系とも連携している。

改革や拡張よりも「現行制度を維持し守る」ことに注力するため、急進的自由化や異能の政治利用に対して否定的である。その結果、異能社会の“安定装置”として国政の中核を担い続けている。

◤ 適応開放派 ◢

適応開放派は、異能を制限すべき危険な力ではなく、人類の進化や文化的発展を導く「新たな可能性」として肯定的に捉える政治思想派閥である。異能を積極的に社会に活かすべきだと主張し、制度の緩和、感染研究の自由化、異能表現の文化的保護などを推進している。

支持基盤は若年層、研究者、都市文化関係者に多く、飽和異能や異能群体の文化的意義を重視する傾向が見られる。「倫理より創造性」「制限より理解」を掲げ、異能教育の早期導入や中央異能生態研究所（CEIB）との連携強化を訴えている。

一方で、社会秩序への無関心を助長する可能性が指摘され、維持均衡派や保安系官僚との対立がしばしば生じている。それでも異能を“共に生きる文化”とみなす社会的潮流の中で、適応開放派の支持は着実に拡大している。

◤ 影響制御派 ◢

影響制御派は、異能の存在や社会参加そのものを否定することはなく認めつつも、特定の異能家系や企業による過度な影響力の集中を強く警戒する政治派閥である。特に星宮家や鋳峰家といった「異能を中核とする象徴的存在」が技術・文化・制度に与える影響を問題視している。

この派閥は異能の透明化や記録制度を支持しながらも、「象徴の権威的利用」や「非公式な政治介入」を制限すべきだという立場を取る。具体的には、公共インフラに関する中立性監査、家系特権の縮小、企業と行政の癒着の監視といった施策を重視している。

支持層は高度官僚、法制度設計者、学術機関関係者など知識層に多い。彼らは「異能の自由」よりも「制度の安定と信頼」を優先する姿勢を特徴とし、異能社会のバランスを維持する“制度の監視者”として重要な役割を果たしている。

◤ 利用主義派 ◢

利用主義派は、異能を倫理的・文化的な存在としてではなく、実用的な労働力や統治手段として活用することを是とする現実主義的政治派閥である。

災害対応、都市整備、物流、監視、治安維持といった社会インフラにおいて異能を最大限に活用することで、経済と秩序の両立を目指す姿勢を特徴とする。

この派閥は旧経済再建特区や企業系技術官僚出身者を中心に構成され、倫理や個人の尊厳よりも成果と安定を優先する傾向を有している。特に都市外でのインフラ整備においては、X等級異能者を匿名で徴用した実績もあり、その運用には社会的批判も根強い。

また、星宮家やCEIBのような知的中立層とも距離を置き、「使える異能は使い切るべき」という立場を貫く。短期的な成果を重視する政策を多く打ち出すため、緊急時や復興期においては一定の支持を集めやすい傾向がある。

◤ 回帰復古派 ◢

回帰復古派（別名：回帰論者）は、「異能のない純粋な人類社会」への回帰を目指す思想的・政治的勢力である。彼らは異能を進化ではなく“逸脱”と捉え、「異能抑制」や「異能不活化」によって人間性を取り戻せると主張している。

中心的団体は政党「人類再興同盟」であり、保守的地域や一部宗教団体において根強い支持を持つ。

しかし異能抑制は技術的にも現実的にもほぼ不可能である。神経干渉や薬物処置など、過去に試みられた手法はすべて人格破壊や認知障害といった深刻な副作用を引き起こした。

異能は単なる力ではなく、宿主の記憶・感情・思考と一体化した情報生命体であるため、外科的に“取り除く”ことは人間そのものの破壊に等しい。

さらに異能は視認によって感染する情報生命体としての性質を有するため、完全な抑制は不可能である。むしろ異能封殺は非合法化や地下化を招き、社会的分断を深める危険性が指摘されている。

このため多くの政治体制は現在「共生」へと方針を転換している。これに対して回帰復古派は「異能擁護派による情報操作」として否定し、陰謀論的傾向を強めている。政策内容よりも情緒的・扇動的言説が目立ち、都市住民や穏健派からの支持は急速に低下している。

すなわち回帰復古派の主張は理念的には強烈であるものの、実行可能性と科学的正当性を欠いた非現実的思想に留まっており、政治的には象徴的立場に甘んじているのが現状である。