僕が見ている一歩先の君

星海ほたる

第1話  あの日のこと

「君はいつも落ち込んでるね。私に聞かせてよ」


そう彼女に言われたのは、僕がいつも放課後に来ていた公園のブランコだ。


僕は彼女の言う通り落ち込んでいて、メンタルも生きる気力さえ失いかけていた。そんなに表情に出ていたのか。


いや、一人で公園のブランコに男子高校生が座ってたら病んでるか、寂しいやつか、黄昏れるのが好きなキザなやつくらいか。


「誰ですか」

「そうだね、知り合いってとこかな」

「でも僕あなたのこと知りませんけど」

「でも今日知り合ったよね」


この人は人間的な観点から見ては僕のとても苦手な人だ。

でもとっても美人で、声が落ち着く。


「私はわかるよ。君のこと」

「てきとうなこと言わないで欲しいです。僕の気持ちなんて誰もわからない」

「……」

「一週間前、めっちゃ仲の良かった女の子が交通事故にあって。亡くなったんです」


あの日はいつも通りの静かな夜だった。

家にジリジリと鳴る固定電話の音だけはいつもより不吉に感じ、母が電話を耳に近づけて少し経った暗いで青ざめたような。信じられないといった表情で黙った。


「母さん、どうしたの」

「美羽ちゃんが車に撥ねられたって……」


信じられなかった。頭が真っ白になって、目の前が涙でぼやけて見える。

病院に駆け込んで、顔を見た時にはもうこの世には美羽はいなかった。


美羽は仲の良い友達というよりも昔から知ってる幼馴染って感じでいつも上から目線で、でも優しくて…


「自分が間違っていた時はいつも叱ってくれるような大切な存在なんです」


なんで僕こんなこと知らない人に話してるんだろ。

また、涙が。


「ん?!」

「辛かったね。でもね、君はそれをこれから乗り越えるためにも。その子の君に生きて欲しいという思いのためにも。生きる希望を忘れてはいけないんだよ」


その人は突然後ろから両手で僕を包むようにハグし、涙でびしょ濡れの僕の背中を優しく撫でた。


「私も前、恋人を亡くしてね。辛くて辛くて、生きることをやめようって思ってた時にお母さんがこうやって撫でてくれたんだー。人ってさ、誰かに支えられてまた生きる希望とかやり甲斐とか見つけて。死ぬまで何気なく毎日を過ごしてるだけでいつかは幸せになっていくんだ」

「……」

「皆んなが絶対平等に幸せになるとは言い切れないけど、君はきっと幸せになれる。私が見ているのは一歩先の君だよ」


その言葉は彼女がいつの間にかいなくなった後も、ずっと頭の中にあって。次会ったら感謝ぐらい伝えたいなと思った。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る