4-8

「今までと随分、話しが違うな」

眠気に襲われているのか、少し目が閉じられている。

「そうですね。このときのお客様は本当に楽しげだったと聞いております」

城守はそう微笑んだ。

話から察するに、隣に宿泊していて問題のお客様というのは四人それぞれの結婚相手と浮気相手なのだろう。

「そんな偶然があるものなんだな」

「後に分かったことですが、どうやら男性側の四人はサバイバル同好会に属しており、妻や恋人の愚痴を言いながらゲームに興じる方々だったようです」


同じ同好会のメンバーへの八つ当たりや横暴な態度が目立つ方々だったそうです


「そして、偶然にも結婚相手が全員、知り合いらしいということで意気投合し、今回の旅行で四人を集めた後に殺害しようと考えていたそうです。見事に返り討ちに遭いましたね」


城守の言葉に男は違和感を覚えた。

まるで、見て聞いたような口ぶりだった。

(まさかな)

今回もあまりに不可能なことが起きている。

作り話もここまでくるとファンタジーだなと男は思った。

雨音がいつの間にか聞こえなくなっていた。


そろそろ眠りたい。


男はゆっくり口を開いた。

言葉を間違えないように、眠りたいと伝えようと。

「次の話を頼む」

「かしこまりました」

城守は微笑み、男は絶望の表情を浮かべた。


目の前には淹れ立てのダージリンティーと食べかけのミルフィーユ。

(俺はいつミルフィーユを食べた?)

男は記憶を辿ろうとしたが、城守の声が男の思考の邪魔をする。


「それでは次のお話でございます」

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