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ショートヘアの女性は昔から自分を後回しにする癖があった。
三人の後ろに少し下がり、無言で微笑みながら話を聞いている。
周りからはそう見えている大人しい人だった。
しかし、三人はいつもショートヘアの女性を同じ場所に一緒に立とうと手を引っ張ってくれる。
とても大切な存在。
しかし、最初にロングヘアの女性が結婚し、次にミディアムヘアの女性が結婚し、五年前にゆるふわ髪の女性が結婚をした。
中学時代から毎日のように遊び、社会人になってからも月に最低三回は会っていたのに、結婚をきっかけに会う機会が減り、今回の旅行で五年ぶりに顔を合わせた。
それまでのショートヘアの女性は自身の気持ちを言える場所もなく、会社では先輩のみならず後輩にもため口で馬鹿にされ、上司にまで邪険に扱われる。
それでも必死に仕事をしていた彼女に近づいた男性がいた。
同じ職場の三つ年上の男性。
決して美形とは言えないが、人懐っこそうな表情と空気が優しそうで社内の評判もいい人だった。
男性は既婚者で、子供も二人いる誰が見ても幸せそうな人。
その男性がある日、ショートヘアの女性に話しかけた。
仕事の手伝いをしてくれ、ショートヘアの女性が困っていたらフォローをしてくれる頼もしい先輩。
ショートヘアの女性は恋愛経験がなかった。
性格もあるが、友人三人が付き合うときは必ず呼ぶようにと言うほどにショートヘアの女性は押しに弱く、断り切れない性格をしていた。
そのため、その手のことを避けていた。
しかし、男性と会話するにつれて心が弾み、既婚者であることに胸が痛んだことにショートヘアの女性は恋をしていることを自覚した。
(この気持ちは隠しておこう)
そう決めていた。
だが、ある日、男性に食事に誘われた。
会社の人とよく行く居酒屋だと言われ、それならとついて行ってしまったのがいけなかった。
男性は言った。
「妻と上手くいってなくてね。彼女、ヒステリーを起こすんだ」
精神的につらいんだと離婚を考えているんだと。
子供達の親権も譲らないつもりだと。
そう訴えられ、思わず慰めてしまった。
そうして、ショートヘアの女性は男性の浮気相手となってしまった。
別れることも出来ず、かといって男性が別れる気配もない。
本当は分かっていたのだ。
男性に離婚する気などなく、単に公に話す気配のなさそうなショートヘアの女性を都合の良いように使いたいだけだと。
気づいていて断り切れず、男性の裏切り行為に加担していることに良心が押しつぶされそうになっていた。
つらくて苦しくて精神安定剤を処方して貰ったが、全く効果がない。
「もういいやと思ったら、今日の旅行の話がでて」
大げさかもしれないが救いだと思ったとショートヘアの女性は泣きながら話した。
「つらかったね」
貴女は昔から優しすぎるからと手を握りながらロングヘアの女性が言った。
「だから私達が見極めてあげようって話してたんだもんね」
ゆるふわ髪の女性が頭を撫で、ミディアムヘアの女性が背中をさする。
「結局、私達も見る目はなかったけどね」
自然とふふっと笑いがこぼれる。
さあ、飲もう。
ワインを片手にゆるふわ髪の女性がかんぱーいとグラスを掲げた。
それに合わせて三人もグラスを掲げる。
女子会は始まったばかりだ。
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