3-3
最初の二日間は姉妹は揃って朝ご飯、昼ご飯、夜ご飯を食堂で過ごしていた。
いつも同じ内容の食事を同じタイミングで食べ、楽しげに笑う姿に従業員は微笑ましく見ていた。
しかし、三日目からはお互い別々の時間に食堂を訪れるようになった。
表情もどことなく暗く、食事もあまり進まないようだった。
五日目にはルームサービスをとるようになった。
「ごめんなさい、体調を崩しているみたいで」
食事を受け取った彼女は申し訳なさそうに謝り、掃除もしなくていいと告げた。
次の日、従業員がルームサービスを届けにいくと、元気そうな彼女が姿を現した。
「あっありがとう!これ美味しいから好きなんだ!」
にっこりと笑う彼女に頭を下げ、従業員は受付へと戻っていった。
そしてチェックアウトの日。
姿を現したのは一人だけだった。
「先に出ていったんだけど見なかった?」
従業員は先程まで、食堂の配膳を手伝っていたので受付から離れていた。
「すっごく楽しかった!ありがとうございました」
そう笑顔で話す彼女を見送り、従業員は掃除をするために姉妹が泊まっていた部屋へと向かった。
部屋は綺麗に使われていた。
寝室のシーツすらぴしりと整えられており、反対に掃除しづらくなっている部屋を苦笑交じりで従業員は掃除機をかけ始めた。
リビングに寝室、そしてもう一つの部屋へと足を踏み入れたときだった。
違和感があった。
いや、違和感なんてものではないだろう。
その部屋だけ異様に汚れていた。
小物類は綺麗に整えられているのに、床が壁が汚れている。
ふと、壁の一部が膨らんでいることに従業員は気づいた。
従業員の通常の視線では全てを捉えることができない。
視線をゆっくりと上にあげていく。
膨らみは大きくなり、そして従業員は掃除機を落とした。
目が合った。
従業員を見下ろすように彼女が見下ろしていた。
壁に埋め込まれ、顔だけ出し彼女は天使のような女神のような表情で従業員に優しく微笑みかけていた・・・ように見えた。
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