第28話「玉座の間、再会と決裂」



──王都神殿・上層空間・転位階層。


《刻印符》を使って展開された“転位魔法陣”が、空間を歪ませる。

悠の身体は、紅く染まった空と光の奔流の中を、一直線に跳んだ。


そして――


ズン、と大地のような衝撃と共に、足が床を踏む。


目の前に広がるのは、王都神殿・玉座の間。


「……ついに来たな、水瀬 悠」


聞き覚えのある声に、悠は目を細める。


玉座に座っていたのは、桐生 隼人。

かつてのクラスメイト、今は“王国の神”となるべく計画を進めた者。


「……あの頃とは、随分変わったな。お前」


「そっちこそ。まさか“最深層から戻ってくる”なんて、予想外すぎて笑ったよ」


悠は、剣を抜いた。


「戻ってきたのは、てめぇをぶっ飛ばすためだ。覚悟しろよ、桐生」


「それはどうかな?」


桐生の指先が、空間の一点を弾く。


瞬間、横合いから転移魔法陣が炸裂した。


──現れたのは、白神 瑠璃、和泉 拓海、イルゼ。


「──悠くん!!」


瑠璃の叫びに、悠はわずかに驚いた顔を見せた。


「お前ら……なんでここに」


拓海が、軽く笑う。


「だから言ったろ? お前が“落ちた”ままで終わるなんて思ってなかったって」


イルゼも真剣な眼差しで告げる。


「あなたが動いてくれたおかげで、王都の真実にたどり着けた。

今ここにいるのは、偶然じゃない。必然よ」


悠は、言葉を失いかけたが──


「……ありがとな。お前らがいてくれて、心強ぇ」


桐生は、嘆息したように微笑む。


「美しい再会だ。まるで劇の一幕みたいだね」


だがその瞳には、冷えた“決意”の色があった。


「ただ、残念なことに。もう“僕の計画”は止められない」


その言葉と同時に、玉座の背後が割れる。


中から現れたのは、全長3メートルを超える金属の巨影。


《第零神核兵〈イデア〉》


無機質な身体と、神性魔力の奔流を纏いながら、静かに浮遊する存在。


「この子は、僕が“理想”として作り出した“完全なる神”。

人の意思で制御できる、世界の支配者。

そして君たちは、それを前に“無力”を知る」


悠は、すでに剣を構えていた。


「……やっぱお前、終わってんな。

そんなモン作って、何になるってんだよ」


「世界を変える。選ばれた者だけが、救われる世界にね」


「……その“選ばれる”かどうかを、誰が決めんだよ。

てめぇの勝手な物差しで、人の生き死にを決めんじゃねぇ!!」


剣が、叫びと共に煌めく。


《グリム、トベ! ユウ、クウ! クウ! アノカミヲ、クウ!!》


「おう、喰らい尽くせ、“神の模倣”ごとき!」


イデアと悠が、衝突する。


轟音が玉座の間を震わせた。


その最中、瑠璃もまた桐生の前に立つ。


「……桐生くん。あの頃、私たちは友達だったよね?」


「友達……ね。

君はいつも、僕を“特別じゃない存在”として見てくれた」


「それは、今も変わらないよ」


「……なら、どうして僕を止めようとする」


「だって、そんなの……悲しいに決まってるから」


瑠璃の瞳が潤む。

それは、今も桐生を信じたかった少女の心だった。


だが桐生は、もう“人間”ではなかった。


「君が泣いたその時点で、僕はもう“戻れない”ってわかってたんだよ」


そして、桐生は指を弾いた。


──イデアが、悠を押し返し、全身から“神罰の魔力”を解放する。


その衝撃は、玉座の間そのものを崩壊寸前にまで追い込む。


拓海が叫ぶ。


「離れろ、崩れるぞ!!」


イルゼが緊急展開した《重力制御結界》が仲間を包む。


悠は、吹き飛ばされた瓦礫の中から、なお立ち上がっていた。


「……負けねぇ。

この手で、お前の“間違い”を終わらせる!!」


そして――物語は最終局面へ。



(第29話へつづく)

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