第10話 静けさの奥に、熱が宿る(編集版)
※本章は【編集版】として、深い描写を大幅にカットして再構成しています。
完全な内容をご希望の方は、NOTE掲載の【完全版】をご覧ください。
俺の返事を聞いて、みーちゃんはふふっと小さく微笑んだ。
ほんのり赤くなった頬に、少しだけ照れくささが滲んでいて──
だけど、ちゃんと目を見て、はっきりと言った。
「……じゃあ、後ろから……ハグしてほしいです」
ふわっと、やわらかく。
けれど、その声には熱がこもっていた。
その願いに、俺は迷いなく──
「わかった!」
即答していた。
嬉しかったんだ。
素直に、頼ってくれたのが。
それに──
後ろから、なんて……想像するだけで、心臓が持たない。
感情も、理性も、記憶さえも、ぜんぶふわふわに溶けてしまいそうだった。
どれくらいその時間が続いたのか、わからない。
ただ──
ふたりだけの世界が、確かにそこにあった。
そして、やがて……。
……門限の時間が、近づいてきた。
みーちゃんとの、夢みたいな時間が……
終わりに近づいていく──。
◆この気持ちだけは、離したくない
「……あっくんて、本当に……優しいですよね」
突然のみーちゃんの言葉。
俺は、思わず照れてしまって。
「え、そ、そうかな……///」
ぎこちなく返した。
すると──
「うん。本当に優しいと思います。
つらい思いをしてきたからこその優しさ、だと思いますよ。
それって、あっくんの……自慢して良いところ、だと思います」
……。
胸の奥に、ぽっと温かい火が灯る。
嬉しかった。
本当に、心から嬉しかった。
こんなにもまっすぐに、
俺のことを“肯定”してくれる人なんて──
今まで、誰もいなかった。
どうしてみーちゃんは、
俺が一番ほしい言葉を、こんなにもたくさん、くれるんだろう。
心が溶けてしまいそうになるくらいに。
だけど──
「……さて。そろそろ門限も近いので……私は帰らないと……」
みーちゃんがそう言った瞬間──
ぶわっ、と。
堪えていた何かが決壊して。
自然に、涙が溢れてきた。
「えっ!? ちょ……なんで泣いてるんですか!? 大丈夫ですか!?」
みーちゃんが驚いて焦る声。
「やだよぉ……離れたくないよぉ……ぅぅ……」
ダメだ。止まらない。
「……あっくん……」
「もっと一緒にいたいよぉぉ……ぁぁぅ……ふぐぅ……」
泣きじゃくる。
カッコ悪さとか、恥ずかしさとか、
そんなもの、今はどうでもよかった。
ただただ、離れたくなかった。
ずっと、ずっと、こうしていたかった。
「もぅ……あっくん……そんなに泣かれたら……私も、離れたくなくなっちゃいます……」
「ごめんぅぅ……困らせてるの、わかってるけど……でも止まらない……ぅぅ……」
言葉にならない感情が、涙になって溢れてくる。
「……あっくん……もぅ……こんな綺麗な涙、初めて見ましたよ……」
そう言いながら──
みーちゃんが、俺の頭をナデナデしてくれた。
ナデナデ……
その優しさが、嬉しすぎて。
「……ふぐぅ……」
ナデナデ……
「少し、落ち着きましたか?」
「うん……ありがとう……っていうか、本当にごめん」
「良いですよ。一緒にいたいって、
そんなふうに本気で言ってくれるの……私も、嬉しいから」
「でも……もう、帰らなきゃ……だもんね。……ごめん、我慢する」
「……はい……」
そうして、みーちゃんを送り届けた。
そして──自分の家に帰宅。
──はーあぁ……。
まるで、魂が抜けてしまったかのような脱力感。
今日は……本当に、すごかったな。
なんか、奇跡が起きすぎてて──
現実なのかどうかも、よく分からない。
胸の中には、寂しさと幸せが入り混じったような感情が渦を巻いてる。
でも──
大切な記憶として、きっとずっと、残る。
さて……
LINE、LINEっと……。
▶ 第4章 ― 第11話につづく。
※編集版として改変したことで違和感があると思いますがご了承ください。
編集前の原作エピソードをご希望の方は、NOTEで公開中の君夏-完全版-をご覧ください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます