2-⑫ 嵐の意味
虫や鳥が交信するような──“テクノロジー”に満ちた島の風景とは打って変わって、ここは
広間は畳敷きで、
俺たちは二列に敷かれた座布団に正座し、
いのりは隣に座っていて、どこかぼんやりとした様子で考え込んでいるようだった。
そのとき、ピピッ──と、小さな端末の通知音が広間に響いた。
「──あ、弟……
しかし、数秒後。
「支援物資、届く見込みがないって……。シェルター近くの食糧倉庫も、一部燃えたみたい」
と、小さく読み上げるように呟く。
その言葉に、
「こっちも連絡入ってた……行方不明者が多すぎて把握できないらしいわ」
そのとき、
「でもさ。ここって、生き物も半分機械なんだよな?てことは、“兵器”として使えたりとか……?」
その言葉を受けて、
「もし、島主さんが力を貸してくれたら……
「どうにか、お願いしてみるしかないっしょ!!」
「島主が来る前に……この島を守る仕組みについて、少しご説明しますね」
天野さんは皆に軽く
「皆さん、上陸前に
──あの時の記憶が脳裏に浮かぶ。
「一つ目は、ただの自然現象。二つ目は、侵入者を排除するための防衛反応です」
そこで天野さんは、わずかに視線をいのりへ向けた。
「そして三つ目──“仲間への保護反応”です」
天野さんの言葉に誰も動揺はしなかった。
次々に明かされる事実を受け止めることに、皆が慣れはじめていた。
「いのりさんが“
「だから、嵐が……」
「あと……これはおまけのような話になりますが──」
天野さんは一呼吸置いて、言葉を選ぶように口を開いた。
「実は、あの時……
──その言葉で、俺の脳裏にあの嵐の夜がよみがえる。
船に戻ろうとしたとき、天野さんがふと立ち止まり、俺をじっと見つめた。
一瞬、表情が強ばったのを、はっきり覚えている。
「今度は
その隣で、
「うぇい!心弦!お前も神なんか~?まじ尊いわ~!」
「やめろって……」
俺は苦笑いしながらも、肩を振り払うことはしなかった。
天野さんはゆっくりと言葉を続けていく。
「その夜、私は記録を
「──昔、あなたが幼い頃、そう、例の
「えっ、何それ何それ?全然知らないんだけど」
「……有名ですよ。知らないんですか?」
太陽がやや驚いたように言った。
「
「はい、それは奇跡ではなかったんです。いのりさんの中に眠る“
「島主の血筋には二つの力があります。ひとつは“海を操る力”、もうひとつは“自らの生命力を分け与える力”。そのどちらの恩恵も受けて、心弦くんは生き残っているのでしょう」
俺の目を覗き込むようにして、天野さんは微笑んだ。
「……あなたの目の奥に見えた金の光は、ごくわずか。でも、確かにその痕跡でした」
その言葉に、
「何なの?いのりが神の子孫だから?
──コン、コン。
微妙な緊張が漂う中、
次の瞬間、音もなく襖が
そこに現れたのは、二十歳前後に見える女性だった。
所作には一切の無駄がなく、どこか神聖な気品をまとっていた。
「失礼いたします。……まもなく、
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