神の技術顧問〜異世界インフラ革命記?
夢花音
プロローグ
この世界が生まれたとき、そこにはまだ秩序も理(ことわり)も存在しなかった。
混とんの中、降臨したのは一人の新人女神——その名はエリュシア。
彼女は、まだ幼さの残る顔立ちと、好奇心に満ちた瞳を持っていた。
「ここに新しい世界を作ろう……」
エリュシアは、神々の学校を卒業したばかり。
卒業制作として与えられた課題は、「自分だけの世界を一つ創造すること」。
彼女は張り切って、空に太陽を浮かべ、大地に草花を咲かせ海に魚を泳がせた。
動物たちも、森や山で自由に暮らせるようにした。
だが、彼女の創造は、少しどころかかなり独創的だった。
魔法のエネルギーをつい盛りすぎたせいで、世界のあちこちに《魔獣》と呼ばれる存在が現れてしまったのだ。
最初は可愛らしい小動物だった魔獣たちは、次第に力を増し巨大化し、凶暴になっていった。
本来なら、この世界の人間の知恵で十分に対処できるはずだった。
だが、病が次々と発生し、伝染病が蔓延。
人々は、生き延びることに精一杯になっていた―――――
真っ白な空間。
何もない、どこまでも広がる白の世界。
その中心に、ぽつんと一人の少女が立っていた。
彼女の名はエリュシア。新米の女神である。
「ふう……どうしよう。世界がめちゃくちゃになっちゃった……魔獣がいなくなればいいんだけど」
エリュシアは困り果てていた。
自分の作った世界が、魔獣のせいで大混乱。
先輩神たちには「自分でなんとかしなさい」と言われてしまった。
そこで彼女は、勇者召喚を決意する——が、失敗する。
とんでもなく失敗する。
そもそも、魔獣がいなくなれば解決する話ではなかったのだが、エリュシアはそこまで理解していなかった。
勇者召喚の儀式が始まった。
女神は両手を合わせ、神々しい光を放つ。
すると、空間にふわりと二つの影が現れる。
「……え?」
「……ここ、どこ?」
一人はスーツ姿のサラリーマン、藤原直人
もう一人はオフィスカジュアルの女子社員、佐伯美咲。
二人とも、突然真っ白な世界に放り込まれ、呆然としていた。
「えっと……こんにちは! 私は女神のエリュシアです! あなたたちを、私の世界を救う勇者としてお呼びしました!」
突然の自己紹介に、二人は目を丸くする。
「勇者? 俺たちが?」
「え、私、魔法とか無理だし……」
エリュシアは焦りながらも、一生懸命説明を始めた。
しかし、どうにも説明が下手で、二人にはうまく伝わらない。
つまり、説得できなかった。
「えーっと……とにかく、私の世界は大変なんです! 魔獣が増えて、みんな困ってて……」
もどかしさに耐えかねたエリュシアは、思わず手を振った。
「もう、見てもらった方が早いですよね!」
すると、空間に巨大なスクリーンのようなものが現れ、エリュシアの世界の様子が映し出された。
村人たちの生活、魔獣の襲撃、そして——
「……え、なにこれ……トイレ、ただの穴……?」
「お風呂も川の水を桶で……嘘でしょ……」
二人は一気に顔色を失う。
「無理無理無理! こんなとこで暮らせない!」
「私、絶対帰りたいです!」
エリュシアは慌てふためく。
「えっ、えっ、でも……返す方法、まだ
習ってなくて……」
神の領域に、気まずい沈黙が流れる。
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