最弱勇者パーティーの苦難!落ちこぼれ女神官ですが最弱勇者様と冒険の旅にでます!
ジャガドン
第1話
ほんの数か月前までは緑豊かな草原。
今では魔物との戦いなどですっかり荒れてしまっている。
それでも植物は逞しく、新たな芽を伸ばしてもう一度豊かな草原を取り戻そうとしていた。
この街トラシールにも希望はやってきていた。
既に4人の勇者様がこの街から、魔族達に支配された国ザシュトラへと旅立っていった。
そして今日、5人目の勇者様がこの街に訪れる。
4人の勇者様が来た時には、街は賑やかでお祭り騒ぎだったのに、この日は何も変わらない、いつも通りの日常。
神官である私は街の外に出て魔物に侵された大地の穢れを払っている所だった。
「助けてー!」
突然響き渡るその声の方を見ると、魔法使いのサリナがスライムに襲われていた!
どんどん私の方へ近づいて来る!
「助けてー! フィニアー!」
「私じゃスライムは…… そうだ! サリナ、私の杖に魔法を!」
「わかった! ファイアー!」
サリナの魔法を杖で受け止め、その炎でサリナにへばりついたスライム達を攻撃していく!
幸いスライム達は大きくないので、なんとかなると思う。
「熱っつ!」
「我慢して! 傷ならヒールで治す事が出来るから」
「うひぃー」
なんとかサリナに引っ付いていたスライムを焼き払う事が出来た。
「酷い傷…… すぐ治してあげるから! ヒール!」
「痛たたたあ…… マジで痛い」
余程傷が痛むのか、サリナは私の服をギュッと握って痛みを紛らわせている。
それにしても、なんでサリナは森の方から来たんだろう?
あっちの方は魔物も多くて危険なのに。
「ファイアしか使えない落ちこぼれ魔法使いのサリナさん? なんで森の方から逃げてきたの?」
「今ならいける気がしたのよ。 落ちこぼれ神官のフィニアさんはいつも通りここで浄化作業をしてたのね。 お陰で助かったわ」
サリナが無事でよかった。
だってこれ以上家族を失いたくはないもの。
「サリナ、無茶しないで」
「わかってるわよ。 でも、私、強くならなきゃ」
サリナの気持ちは痛いほどよく分かる。
私も強くなりたい。
強くなって、魔族の脅威から人々を救いたい。
「ねえサリナ。 私達街の人からなんて言われてるか知ってる?」
「うるさいなぁ。 爆炎の焔と奇跡の青とかだっけ?」
「違うでしょ? 灯レッドと和みブルー!」
「知ってるわよ。 私達が落ちこぼれだって事もわかってる。 ファイアしか使えない赤髪の魔法使いとヒールしか使えない青髪の神官フィニア。 ああ、フィニアは将来有望なんだっけ?」
「そう言う事いわない! ちょっと発育がいいだけだから! でも、街の人の言う事もわかるでしょ?」
「顔だけはいいんだから、才能もなくて出来る事もないし子供産めってやつでしょ? そんなの無視よ無視! 私は魔王を倒しに行くんだから」
「気持ちは分かるけど…… 私達もう12歳だよ? 街の人の話しだってだんだんわかる様になって来た。 弁えるべきだと思う。 私はサリナが危険な場所に行っちゃうの嫌だな」
サリナは黙り込んでしまった。
才能がないって分かっているし、サリナも私の事を大事に思ってくれているから。
どうあがいても無理なものは無理。
どうして神様は私達に才能を与えてくれなかったんだろ……。
街へ帰ると皆挨拶をしてくれて、とても良い人達ばかり。
家族もそうだけど、街の人皆が幸せな生活を送り続けて欲しい。
その為には厄災を振りまく魔族達を滅ぼさなければならない。
だからサリナと私は力が欲しいと願っていた。
「フィニア!」
「何! これ!?」
街を歩いていると、突如として黒い影に覆われた!
空を見上げると、大きな魔物が小さな魔物を引き連れて羽ばたいている!
「どうしてこんな所にドラゴンが!?」
街の人達は逃げ惑い、戦える人はドラゴンに向けて攻撃を放つ。
隣にいるサリナも届きもしないファイアーの魔法を放とうとしていた。
「馬鹿! そんなの届かないし、当たっても意味ないでしょ!」
「だからってね、逃げられるわけないでしょ! あのドラゴンの上をよく見て!」
サリナに言われてドラゴンを見つめる。
「魔族…… しかもあれって……」
「そうよ! 私達の村を滅ぼした魔族! 身寄りのない私達を育ててくれた先生達の仇!」
孤児院が襲撃された時の悲しみと怒り、そして恐怖が込み上げてくる。
しかも今回はドラゴンに騎乗しているし、この街が滅ぼされる運命にあるのだとすぐに悟った。
あっという間に街が破壊されていき、魔物は地上へと攻めて来る。
街に居た冒険者達のお陰で、少しは持ちこたえているけど魔族の攻撃で確実に一人一人殺されていく。
そして、私達も取り巻きの魔物に囲まれてしまい、一緒に戦ってくれている冒険者の人と徐々に追い詰められていってしまった。
「くそっ! こりゃ駄目だな。 お嬢ちゃん達走れるか?」
「走れます!」
「私も走れるけど、どうするつもり?」
「他の仲間と合流する。 広場の方へ走るから振り返らず行け!」
「分かりました!」
冒険者の人が合図を出し、広場へ向かう道を塞いでいる魔物を倒してくれた。
私とサリナは全力で広場の方へ向けて走り出す!
しばらくして、それがおかしい事に気が付いた。
私とサリナは足が遅い。
いつまで経っても冒険者の人が追い付いて来る気配はなかった。
「サリナ! 振り返っちゃ駄目よ!」
「なんで私達逃げてるのよ! クソクソクソぉ! 力があれば…… 私達にもっと力があればぁ!」
逃げだす事しか出来ない自分に苛立っている。
でも、そんな葛藤はもうしなくても良さそうだ。
広場に着いた私達を待ち受けていたのは――。
「ほう、生き残っていたんだね我が娘達」
「先生の体を返しなさい! サイラース!」
「そんなに怒ってどうしたんだいフィニア? サリナもどうして私の事をそんな目で睨むんだ?」
「お前ぇ! 先生の体で私達の名前を呼ぶなぁ! ファイア! ファイア! ファイア!!!」
サリナの魔法は先生の体を乗っ取った魔族サイラースに届くことすらなく掻き消えていく。
圧倒的に力の差があるけど、私達二人は同時に同じ行動を取った。
手に持っている杖とロッドで殴りかかる!
「キャア!」
「うぐっ!」
魔族が指をパチンと弾き、正体不明の力で二人同時に吹き飛ばされてしまった!
「これだけ力の差があると言うのに、人間は面白いですねぇ。 良いことを思いつきました。 あなた方の恩師であるこの体を使って。 フィニア、サリナ、先生が二人を愛してあげよう。 さあ、こっちへ来て、体を委ねなさい。 私が優しく二人を大人へと導いてあげよう」
先生の体でサイラースは、妙な魔法を使って私達の体を縛り上げ手繰り寄せていく。
身動き一つ出来ずに、手繰り寄せられた私達は先生の腕に抱かれてしまった。
「さあ、先生が愛してあげますよ。 フィニア、サリナ」
戦って死ねれば少しくらいは満足できたかもしれない。
でも、こんな結末など望んでいなかった。
必死に抵抗しようとしても、ジタバタ藻掻く事も声すら出せず、先生の腕が私達の服を破くのを見て、涙する事しか出来なかった。
「そんな事はさせないぞ。 下郎め!」
突如として現れた声の主は私達の方へと走って来て、先生の体を乗っ取っているサイラースを突き飛ばした!
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