第6話 奪われたペニス

夜、眠ろうとした時、謎の動画ファイルのことを思い出した。机のライトをつけてパソコンにUSBを差し込み、中を開く。“system”フォルダはきちんと保存されていた。“eja”に入っている残りの動画から見る、ペニスから精液が飛び散る動画ばかりだ。あるものは手に握られたまま勢いよく白い液体が飛び出て、あるものは女性の口の中に排出され、あるものは途中で手を放され、暴れながら精液をまき散らしている。

 もう一つのフォルダの“hmdr”には何が入っているのだろうか。私はとフォルダを開けると、拡張子のないファイルが二つ入っていた。バイナリーエディタで分析すると、どちらも動画ファイルと分かった。各調子を付けて一番目のアイコンをダブルクリックする。

どこかの部屋が映し出された。ホームビデオで撮ったように感じる。見覚えがある気がした。画面右から陰毛を剃った、だらんとしたペニスが現れた。程なくして両手が画面左から現れそれを包む。手の甲は血管が浮き出ている。男の人の手のようだ。その中でペニスは徐々に大きくなりながら立ちあがった。次の瞬間、横顔が画面左から出てきた。眼を疑った。私の脳梁が捻転する。どういうことなのか。「彼」は片手でペニスの根元を持ち、口に含みペニスを出し入れする。「男」の声が聞こえる。

「うまいよ。気持ちいい」

誰の声?

「お前は変わってるよな。ノンケなのに、ストレスがたまるとチンコにしか興奮しなくなるなんてな」

この「男」は誰だろう。見当がつかない。でも「彼」の口元や手は見覚えがある気がした。いや、そんなはずはない、と自分の認識を疑う。「彼」はもう片方の手で「男」の睾丸を持つと、ペニスを喉の奥の方まで含んだ。全体を口に出し入れした。

「いきそうだ」

と「男」が言う。すると「彼」はさらに激しく口の中に出し入れした。「彼」の顔全体が映った。

疑う要素がなくなった。

「男」が「いく」と言うと、「彼」は亀頭をすっぽりくわえて止まった。ペニスが脈打っている。

「あーっ、気持ちいい。まてよ、まだ飲むなよ、次はお前が立てよ」

ペニスが口から抜ける。「彼」は唇を硬く閉じている。画面左側にジーパンをはいた腰部が映る。

「お前ビンビンじゃないか」

「彼」の股間は明らかに盛り上がっている。彼がベルトを外してズボンを下ろすと、ペニスがあらわになった。見覚えのあるそれは、いつもより大きく太く、重力をものともせず立ち上がっている様子が映し出されている。

肌がきれいで、前髪の長い人が画面右から現れた。それは声で「男」だと分かるが、映っている横顔だけ見ると女の人のように見える。この「男」の左目の下に泣きぼくろがある。「男」は「彼」のペニスを口に入れ、激しく出し入れする。「男」は口からペニスを出し、手で勢いよくしごく。

「どうだ。精液を口に含んでせめられる気持ちは」

と「男」がそういうと、再びペニスにむしゃぶりつく。

「あ、気持ちいい」

「彼」は私の聞いた事のない甲高い声で言う。

「おいお前、飲んだだろ。折角、精子を出しながら飲ませてやろうと思ったのに」

と「男」は言うと再び口にペニスを含む。

「うっ、いく」

 やはり私が聞いたことのない一オクターブ高い喘ぎだった。その瞬間「男」は口からペニスを出し根元をしごく。血管が浮き出るように膨れ上がっていて、激しく脈打ちながら白い液体をこれでもかというくらい吐き出した。

「すごいな、めちゃめちゃたまってたな」

「ありがとうございます。気持ちよかったです」

画面からはペニスも手も消えた。

「でもさ、お前はなんでチンコに興奮するんだ?」

「わからないです。ストレスが溜まると膣よりそっちのほうに興奮します。射精しているのを見たり、射精させたりしたくなるんです。膣で射精できなくなるんですよね。」

私の心理は反応できないでいる。

「俺はお前と違って男しかダメだからな。女のことは良く分んないけど、ビデオに撮っておいたんだから、まあこれを見ながら、せいぜい自己処理しろよ」

何も思わない。

「俺も相棒がいるからさ、だから、あまり相手してやれなくて悪いな。浮気は良くないからな」

「すみません。ありがとうございます。ところで先輩は」

 とここでビデオは終わっていた。

もうひとつの動画を見てみる。さっきと同じ部屋が映った。今度は上から見下ろすアングルになって、画面左右に興奮したペニスがあり向かい合っている。左側はさっきの動画と同じ「彼」のペニス、右側が「男」のだろうと思った。二つのペニスは抱き合う様に重ね合わされ、右側の人の色白い手が二本を手で束ねてしごく。お互いの呼吸が荒い。

「攻守交替だ」

 これは「男」の声だ。さっきのビデオと同一人物だと確信した。左の方から「彼」の手が伸びてきて、ペニスを重ね束ねしごく。手の動きが速い。

「ああ、いく」

「男」がそうと言うと、右の亀頭から白い液体が何度も噴出した。「彼」の亀頭は「男」の精液まみれになっていて、

「僕もいきます」

と「彼」も言い、「いく」と甲高く言うと、ペニスの穴からは白い液体を何度も多量に吹き出した。二つのペニスはお互いの精液にまみれていた。

部屋だけが映された画面になる。よく知っている部屋だ。

「おまえのチンコ好きはいつから始まったんだ?」

と「男」が言う。

「多分、小さい時に父親にいたずらされてからだと思います」

と彼が言う。ここでビデオは終わっている。

茫然としていたら、突然状況を理解できた。

私は「男」に奪われたのだ、拓海のペニスを、私のものであるはずのものを。そう思って取り返そうと決意した。

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