未来検索スキルはチートなんですけどね
そきおこ
第1話 300面体分の1
『さぁ、打席には当たりに当たっている遠藤選手。
1打逆転の場面で結果を出すことができるか。
打ったーーーーー、打球はぐんぐん伸びライトスタンドに。入るか、入るか、入ったーーーーー!!!!!
これで100打席連続ホームラン。』
我ながら、素晴らしい能力を選んだものだ。
人生好き放題だぜ。
遠藤勇作。32歳の誕生日、神からもらったチート能力で人生順風満帆。
………そんな未来が良かったんだけどなぁ。
勇作は、鬱蒼と茂る森の中、大木の根本に座り込み頭を抱えていた。
---
昨日のことだ。
勇作が、部屋でのんびりテレビを観ていると、突然 『しまった』 という声が頭に響いてきた。
なんだ?
驚いて周囲を見渡すが、誰もいない。
おかしいなと思っていると、徐々に部屋の風景が変わっていく。
しばらくすると、白っぽい空間の中で、じいさんと2人向かい合っていた。
「お主が遠藤勇作じゃな。すまん。」
白髪、白髭、白装束のじいさんが、勇作に向かって頭を下げる。
「え?何が起きてるんですか?」
「簡単に言うとな。お主を地球から転移させてしまった。」
「転移?」
「実はのぅ、ワシは神じゃ。お主のいる地球を含む、いくつかの世界を統括しとるんじゃがな。その内の1つに対し、勇者召喚を発動してしまった。」
「お、俺が選ばれし勇者なんすか?」
「驚いているようじゃの。そりゃそうじゃ、お主に勇者の才能はない。お主の顔を鏡で見てみるが良い、勇者にはほど遠いじゃろ。」
「うわ。ひっでぇ………。」
「朝から仕事に夢中になっているうちに、間違えて勇者召喚ボタン押してしまったんじゃ。お主が選ばれたのは偶然じゃ。」
「ぐ、偶然………。
で、これからどうなるんですか?あと、地球人としての俺はどうなるんですか?」
「勇者召喚は、1回しかできない必殺スキルじゃった。もう使えんから、地球には帰れん。」
「まぁ、独身だったし、恋人もいなかったんで気にしないけど………。せめて、新しい場所では楽しい人生にしてくださいよ。」
「も、もちろんじゃ。お主にはチート能力を授けよう。さぁ、何が良いか述べよ。」
「え?自分で決めるんすか?」
「そこまで含めての勇者召喚じゃ。本来は、正しい心を持つ、知力に優れたイケメンを厳選するので、そやつが素晴らしいチート能力を開発してくれるというものなのじゃ。」
「正しい心を持つイケメン………。俺みたいに普通のやつが選ばれることを前提にしてないのね。」
「さぁ、何でもいいから言ってみい。」
「え、えっと………。何度も時間を繰り返して、一番いいやつを選べる能力。」
「なんじゃそりゃ。」
「え、えっと………。昨日パチンコ行ったんだけど負けたんですよ。パチンコって『300面体のサイコロの1つに当たりがある』ようなもんだと聞いたことがあるんで。
サイコロふって外れたら時間を巻き戻し、当たった時だけ俺の時間が進むようなイメージですね。」
「その能力、ワシが欲しいわ………。って発動してしまった。うわ~~~~~。」
「どうしたんですか〜?」
神じいさんがぶっ倒れてしまった。苦しみながら、勇作に告げる。
「お主の能力を実現するために、かなりの神力を吸いとらてしまった。恐ろしい能力じゃ。しかもお主の能力は、ワシの神力をこれだけ使っても、まだまだ完成せんらしい。お主がレベルアップすれば完成に近づくはずじゃから、がんばるんじゃぞ。」
「急展開だなぁ…。
あ、聞くの忘れてたけど、俺が行く目的ってなんなんですか?」
「目的は………ない。間違えて押しちゃったか………」
神じいさんは逝ってしまったのか?
会話が途切れたと同時に、勇作は深い森の中に立っていた。
えっと、これはきっと異世界なんだよな。
ガサガサ
背後の茂みから、突如巨大な熊のような生き物が現れた。
現状を確認する間もなかった。
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