青春とデッドエンド・サバイバル ~普通の大学生が、ゾンビパンデミックを生き延びる方法

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ACT.01

【プロローグ】


「おっ秋庭あきばー!このあと同好会行く?」

「あー……今日はいかねえかも」

「なんだよ、お前サボりかよ!」

「俺、腹痛くって……」

「嘘つけ!ピンピンしてんじゃん」

「すまん花田、先輩に上手く言っといて」

「しゃーねーなぁ、一つ貸しだぞ!」

「はは、頼むな」


 友人に手を振って、校門に向かう。


 ──俺は秋庭穂浪あきばほなみ

 藤実ふじみ大学二年生。男バス同好会所属。

 身長181cm。見た目はワイルド。

 まあ、見た目だけなんだが。


 自他共に認めるヘタレな自分を変えたかった俺は、大学一年の終わり、髪をルーズにしてあごヒゲを生やしてみた。

 そしたら一瞬だけモテた。

 そんで、かわいい彼女もできた。


 しかし喜んだのもつかの間。

「見た目と中身、ぜんぜん違うねー」と言われ、俺は三ヶ月でフラレた。

 次にできた彼女にも、似たような理由でフラレた。

 そんなことが続けば、恋愛に後ろ向きになってしまうのも当然だと思う。

 太陽が東から昇ったり、水が上から下に落ちるのと同じく、自然の摂理である。

 要するに俺は、傷つくのが嫌で、恋愛から遠ざかっていた。


 まぁ、恋愛以外も似たようなものではある。

 よく言えば優しい。悪く言えば気が弱い。自信がないともいう。

 体を動かすのは嫌いじゃないが、積極的にガツガツ行くタイプではない。

 人と揉めたり、争うのも好きじゃない。

 平和主義といえば聞こえはいいが、本質はやっぱりヘタレなのだ。



 そんな自分が、


「雪生さんに、さわんなやぁぁあぁッッ!!!!」


 女子を背中に庇って、必死にゾンビと戦ったり、


「ガアァァアッッッ!!!」

「……っしゃ!」


 ラスボス的クリーチャーと死闘を演じることになろうだなんて、俺自身、まったく予想もしてなかったんだよな……


 本当、世の中って分からん。


 ……というわけで。

 これは、ヘタレな普通の大学生である俺が、ゾンビパンデミックに巻き込まれ、必死にあがいて、いつしか国の存亡に関わっていく……はずの、物語だ。

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