第4話 映画コラム ①
確かに、売れてない芸人の東動が映画専門誌の中でも特に人気のある雑誌でコラムを連載していることに疑問を持つ人がいるかもしれません。それは、ほんの些細な出来事がきっかけで始まったのです。
数年前、彼はあるミニシアターで行われたインディーズ映画の上映後のトークイベントに、たまたま観客として参加していました。その日の上映作品は、ホラー映画専門監督として知られる人物の最新作でしたが、意外なことにその内容は純粋な恋愛映画だったのです。
急遽、トークイベントのゲストである監督の都合が悪くなり、劇場側は困り果て、急遽、観客の中から映画について熱く語れる人を探すことになりました。
そこで白羽の矢が立ったのが、最前列で監督の過去のホラー作品群について熱弁していた東動でした。ホラー映画のイメージが強い監督の180°な方向転換に、彼は誰よりも興味津々の様子だったのです。少し戸惑いながらもステージに上がった東動は、その恋愛映画が持つ繊細な感情表現や、過去のホラー作品との意外な共通点などを、持ち前のユーモアを交えつつ、独自の視点で語り始めました。
彼の話は予想以上に面白く、専門的な知識と素人にもわかりやすい表現を織り交ぜた語り口は、観客だけでなく、その場にたまたま来ていた映画雑誌の編集者の目に留まったのです。なんと偶然にも、その編集者は東動が卒業した大学の先輩だったのです。イベント後、その編集者はすぐに東動に声をかけ、彼が書く映画評の面白さに可能性を感じ、ウェブサイトの小さなコラムから執筆を依頼しました。
そのコラムが徐々に読者の間で話題となり、独特の切り口と熱意ある文章が評価され、ついに映画専門誌の中でも最も人気のある雑誌での連載へと繋がったのです。まさに、ホラー専門監督の180°に方向転換した恋愛映画、そしてあの日の些細な偶然が、東動の人生を大きく変えるきっかけとなったのでした。
そんな過去をふと思い出しながらも、東動は珍しく雑誌からの依頼で、春休み公開予定で以前大ブームとなった海外映画の続編、世間では超話題作と言われてる作品のコラムを書かなければならなくなっていた。普段は自身の興味のある作品について自由に書かせてもらっている彼にとって、このような商業的な大作の依頼は少し異例だった。それでも、話題作の続編とあって、読者の関心も高いだろうと考え、彼は映画配給会社の試写会へと向かった。
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