屋上な日進月歩

翠ノ昇

リクと不思議な少女

オープニング

 春の日和の午前のことだった。

 中学校のチャイムが、寝ていた少女の耳の中にするりと入っていった。音は耳から脳へと辿り着き、暴れ回った。少女が鬱陶しそうに枕で耳を塞いだが、一度脳に侵入した音には意味がない。少女の目は開かれた。眠そうだ。最も彼女は常に半目だが。

 

 (今日もチャイムに負けた)


 “チャイムに起こされれば負け“という少女の謎めいた戦いは、980戦3勝977敗といったものである。

 クッションをベットの壁に押し当てて、苦しそうに頭を埋めた。そのまま壁に張り付くようにして起き上がる。時計を見れば、もう8時を回っていた。少女が昨晩寝たのは__いや彼女は今日の3時に眠りについた。睡眠時間は5時間程度であった。


 少女はベットから起き出そうとして、頭をぶつけた。少女のベットは二段ベットの下段である。上段には埃を纏った季節外れの毛布が重ねられている。ベットは歳の離れたいとこのものだが、1人っ子の私に「使わないから」とよこしてきたものだ。少女は不機嫌そうにぶつけた額をさすりながら、自室の外にある行ってのであった。


 自室の外、扉を開けたすぐそこには、いつも子猫が待っている。短い足と、垂れた耳が特徴的な猫だった。子猫の種名を少女は調べたはずだったが、なかなか思い出せないのである。子猫は少女の足に擦り寄ると、「ミー」と高い声で鳴いた。

 少女は、自分の足元でゴロゴロと喉を鳴らすそれを抱き上げた。少女は階段に向かって歩き出した。

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