第3話

第3話



「へえ。ブリアナに、馬に興味があったとは、意外だな」


 高邁な声音が降り注がれ、私は慌てて振り返る。


 起き抜けに囁かれた艶美な声音と違い、とても低い。


 近くに聳え立つ美貌の持ち主の青年も、シフィルとはうり二つだった。


「やあ、ブリアナ。ここで一体、何をやっているのだ?」


 同じ衣装だというのに、そう言ってくる彼は、シフィルやウライフとは違う。


 明らかにこの上なく自信たっぷりで、男くささは無限大だった。


 私は自身、いてもたってもいられない不思議な気分になってしまう。


「何って、馬を見ていたのよ。それは駄目なわけ?」


 私は、どうにか虚勢を張り高らかに言い放ち、背筋を伸ばした。


「駄目とは言わないが。何だか機嫌が悪そうだな? ブリアナ」


「そんなこと、ないけど。えっと、あなたはカフライ?」


 私がじっと藍海松茶色の瞳を覗き込む。


 名前を呼ばれた青年に、少し動揺が窺える。


「へえ。僕が誰なのか、わかるのか?」


「わかるわよ。だって、ウライフと雰囲気が違うもの」


 私は、明らかに意外そうな声音に気づき、呆れたように微苦笑を刻んだ。


「雰囲気?」


 少し眉根を寄せるカフライは、どうやらわかってないように見える。


 私には、三人を一目見たことで、確信があった。


「ええ。シフィルは、不機嫌なライオン。ウライフは、小悪魔的なライオンかしら。カフライは、不敵なライオンね」


「ライオン?」


「そうよ。ライオンがこの世界にいるかはわからないけどね。ならば王者の風格のある隆々とした生き物の例えかしら」


「王者の風格?」


「そうよ。あと三人とも瞳の色とか、全然違うわ。どう間違えるのよ」


「……」


 私がずばりそう言うと、カフライは一瞬ぽかんとする。


 次の瞬間、カフライは肩を震わせると、その場で腹を抱えて笑い出してしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る