第5話
第5話
「もえ、理解できましたか?」
渋い顔をしている私に、ホアンが訪ねてきた。
「……ブリアナを浄化するためには、どうすればいいの?」
私は、ひとまず一番大事なことを思い浮かべ、ホアンへ問うてみた。
「もえには、まずブリアナの身体に入って貰います。あなたの身体はきっちりと庇護しますから、問題ないので、心配はしないでください」
淡々としたホアンの言葉は、またもや想定外なもので、私は目をぱちくりさせる。
「ど、どういう意味?」
「もえの精魂をブリアナの身体に、移すのです。そのあと、彼女の精魂を探して貰います。それでもきちんともとの身体には戻れますから、大丈夫ですよ」
「……信用していいってことよね?」
私は、とんでもない状況に混乱を極めていた。
従姉のブリアナを助けるのは、自分しかいないということ。
それをどうにか念じるように、必死に自分にいいきかせる。
「ええ。私が必ずもえを守ります」
私の言葉に応じるように、ホアンは真摯な瞳を向けてくる。
滲むものは本物で、私は心底安堵した。
「じゃあ、仕方ないわね。ブリアナのためだし」
「仲悪かったのに、もえは優しいのですね」
「優しい? 違うわ。これは人として当たり前のことよ」
「当たり前ですか」
「そうよ。ブリアナは苦手だったけど、大嫌いってほどでもなかったから。それに彼女の両親にもプレゼント貰ったりとか、いろいろと世話になったこともあるわ。だから恩はあるわけだしね」
私は、うんうんと頷きながら言った。
「もえはブリアナと違うのですね。彼女は結構身勝手でしたよ。王子たちの花嫁候補にしてはあらゆる欲望に忠実で、愉悦しか考えていませんでした」
ホアンは、少し侮蔑を入り混ぜた目で言うので、私はその眼差しに眉を顰める。
「……それは、人それぞれの価値観じゃないかしら? 私は自分に自信ないから、男の人に免疫なく苦手だもの」
「苦手ですか?」
「ええ。ブリアナは、何も知らない異世界に流れ着いて、自分に自信のある彼女が、頼れる人を甘えられる相手に求めてもおかしくないわ」
「確かに、一理ありますけど。ならばもえはどうなのでしょうね? 王子たちの花嫁候補としての資質があるのか、とても楽しみです」
私の言葉に小さく頷き、ホアンは明敏な瞳を面白げに輝かせた。
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