第51話 結成! ジチナヴ隊!?
デュエルから命を受けた当日の昼過ぎ。
ナルが朝食兼昼食を終えた頃に話を切り出した。
「これから戦争になるわけだがー。俺達四人はこのまま特殊部隊として活動することになった」
「ほえ!? な、な、なんで!? ボク、冒険者なんだけど!? どうして戦争~!!」
「そりゃあもう、我らがレイク王国を守るために……」
「ボク、ポンドールの冒険者なんだけどー!」
「斥候として、ナルの圧倒的な技量が必要なんだ! 君しかいない! 君だけが頼りなんだ! 他には代えがたい才能とパーティのムードメーカーとして絶対に必要だ!」
「えっ!? ボ、ボクの才能が!? ふ、ふーん! ジョナサンがそんなに頼ってくれるなら、ちょっとは手を貸してあげてもいいけど……」
チョロインッ!!
だが、実際に彼女の盗賊能力は、冒険者の街ポンドール全体を見回しても、上から数えたほうが早いレベルに到達している。
俺がコツコツとスキルレベルを上げていったからな。
次にチエリ。
「ムフーッ! やりますよ私はー!!」
やる気満々!
冒険者をやって自信をつけた彼女は、ちょっと調子に乗ってる今が実力相応と言えるだろう。
魔法医としてのレベルは、既に同期の見習いの中ではダントツトップ!
なお、格闘スキルの腕前は当然ながら魔法医一門の頂点に……。
今回も頼りにしているぞ。
そしてヴェローナ。
既に完成されたガンナーとしての彼女は何も言うことは無いだろう。
「はあ……。グーテン様に言われていますからね。仕方ありません。手を貸しましょう」
「この四人で行くぞー! みんな、よろしくたのむー!!」
「ちょーいちょい! ちょいちょいちょいちょい!!」
俺の脇腹を後ろから連続でつつくやつがいる!
「ウグワーッ! やめろアルシェ、くすぐったいから!」
「あたしのことを忘れるなー!! ずっといるでしょー!」
「だってほら、アルシェは見つかったら大変なことになるから、人数に数えられない」
「うっ……それはそうだけどさあ」
だが戦力としてはあてにする……。
サキュバスというだけで、並の兵士では手も足も出ない超強力な戦力になるからな。
なにせ、魔法のかかっていない攻撃が通じない。
兵士の武器なんか、数打ちの槍や弓矢なのだから、アルシェには刃が立たないのだ。
「ではこのチームの名前を、ジチナヴ隊ということに……」
「言いにくい言いにくい!」
「それはちょっとどうかと思います……!」
「私もそれ、センス最悪だと思いますわ」
「あたしもありえないなーと思った」
総スカンではないか!!
「セレスはどうだろう」
『勇者よ、私はそういうのはあまり興味がありませんから』
傍観者だ!
仕方ない、なんか仮にジョナサン隊とでもしておこう。
そのような部隊名で、デクストン団長に報告したのだった。
「以前のジダチ隊はどうかと思ったが、今回はまともだな」
あの頃からまともじゃないと思われていた!!
ともかく、許可をもらい、デュエル王子にも認知してもらった。
これで俺の部隊が本格稼働だ。
とは言っても、やることは冒険者時代とそう変わらない。
少人数による遊撃である。
今回は、夕食までの間にちょっと外に出て帝国軍をつついてやろうということになった。
「呆れた。フラッと作戦行動をしますのね。もっと考えがあるかと思いましたのに」
「特に目的のない作戦行動が敵に混乱をもたらすんだ。行くぞ」
ジョナサン隊の特徴は、並外れた機動力である。
運動スキルが高いメンバーや飛べるメンバーしかいないので、荒れ地での移動速度は常識外れなものになる。
例えば今回、王国の南方にある岩山を移動しながらそこに潜む帝国軍に嫌がらせをするわけだが……。
「うーむ、平地を小走りするくらいの速度でぎゅんぎゅん登山していく。我が事ながら速すぎる」
そしてこの隊の先陣を切っているのがナルであり、彼女が誰よりも一番速い。
人間ではないヴェローナですら、ナルには追いつけない。
「あの移動力、異常なほどですわね……! 昆虫種や獣種の魔族に匹敵しますわ」
「なるほど、そのレベルだと今のナルくらいの移動ができるのか。じゃあ、もっと鍛えないとな……」
「ジョナサン、あなた、何を考えていますの?」
今から、不死王編で五将軍たちと戦うことを考えてるよ。
不死王本人とは、よほどのことがない限り戦いにはならない。
だが、五将軍は好戦的な連中なので、何度かぶつかる機会があるはずなのだ。
俺も鍛えねばだが、仲間たちも強化しておいて損はない。
特にナルは、不死王の軍勢最速クラスのやつよりちょっと速いくらいまでは鍛えたい。
この戦争編が、いい経験値稼ぎの場になるぞー!!
「ジョナサン!」
ナルがこっちを振り向いて手を振った。
声は抑えめ。
つまり、向こうに帝国軍の兵士が潜んでいるということだ。
「いたよ……!」
「よし。崖崩れを起こして、帝国の連中を巻き込むぞ」
作戦内容は簡単。
自然災害を装い、敵軍にダメージを与えることである。
これでちょこちょこ相手の兵士を減らし、補給物資を減らし……。
継戦能力を奪う。
これが俺の狙いだ。
それに、一番安全な作戦だからな。
全員が軽々と山越えできる部隊でなければ実行不可能だけど。
「ではゆーっくり練気をして……。俺が今から岩山を足4の字固めで痛めつけるんで」
「ジョナサン、あなた今なんて言いましたの? 私の耳がおかしくなったのでなければ、山に技を掛けるって」
足4の字固めが概念に攻撃を仕掛ける関節技なら!
山を痛めつけて崖崩れを引き起こして見せろーっ!
「ツアーッ!」
俺は虚空に足4の字固めを仕掛けた。
だが!
確かに、何かの足をガッチリホールドしたのが分かる!
岩山が、ウグワゴゴゴゴゴ、と揺らぎ始める。
成功だ!
山が痛がっている!
だが、俺の中で、溜め込んだ練気の力が猛烈な勢いで減っていくのが分かる。
「頼む、ヴェローナ! ダメ押しであの揺れている岩場を射撃してくれ!」
「もう意味が分かりませんわ!!」
文句を言いながらも、正確無比な狙撃が岩山のてっぺんにある、揺れる大岩を撃ち抜く。
頑丈そうに見えた一枚岩のそれが、あっという間にひび割れた。
「なんですの!?」
「どうやら俺の技は、あの岩に掛かっていたらしい……。関節技、難しすぎるぜ」
ちょうど練気が切れた頃合いだ。
砕けた岩山が無数の岩塊となって、転がり落ちていく。
俺達を挟んで向こう側の山肌から、「ウグワーッ!?」「突然の崖崩れ!」「ちょっと揺れたと思ったら!」悲鳴が聞こえてくる。
「うわーっ!! 凄いよ! かなり巻き込んでる! やっぱりジョナサンの作戦は凄いなあ」
「どう考えても行き当たりばったりですわね……ですけど、それが刺さるというのは確かに……英雄の兆しなのかも知れませんわ」
ヴェローナが警戒の色とデレの気配を同時に見せてくるのだった。
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