第37話 隠しスキルの条件!? ついでに三級昇格

「おめでとうございます! 三級昇格です! 凄いですよ、何をやったのか詳しいことは知らされませんでしたが、ギルドマスター直々の承認です!」


 どよめく冒険者ギルド内。

 得意げなナル。

 照れているチエリ。


「なあセレス、縮地、なんだか変な説明文がついてないか?」


『そうですねえ。確か勇者の軽気功も、パルクールと格闘術の複合で出現したスキルでしたよね。この縮地というスキルもきっと、それのようなものなのではないですか?』


「だってほら、縮地って書いてるフォントが虹色なんだよ。SSRかURなんじゃないか?」


『おめでたいですねえこれ。分かりやすく特別感があっていいですよね』


 俺は!

 豊穣神セレスと雑談していたので、三級昇格の話を適当に聞き流していたのだった!

 なにせ、三級昇格なんか既定路線だったからな……。


 おっと、冒険者たちが集まってきた!

 俺達を胴上げするつもりだな!?

 おいおいおい!!

 なんで女子の方に男どもが集まっていくんだ!


「おいヴェローナ、蹴散らすぞ」


「異論ございませんわ。私の体は不死お……ゴホン、グーテン様のみ触れることを許されるのですから」


 俺とヴェローナで押し寄せる男ども相手に身構え……!


「ツアーッ!!」


「あちょーっ!」


 俺の崩拳と、ヴェローナの長銃ぶん殴りが炸裂した!


「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」


 ふっ飛ばされる冒険者の男ども!!

 この世界の男たちは基本、機会さえあればすぐさま間男に化けるからな!!


 三級のバッヂだけもらい、入口に立ってこれを見ていた狼獣人のギルドマスターとハイタッチし、俺たちは外に出たのだった……。


 狼獣人のギルドマスター!?!?!?!?!?!


 そんなやつ、原作に出てきてねえぞ!!

 いや、出る機会が無かったのだろうが、なるほど、獣人だったからNTR関係なかったんだな……。

 今まで人間以外の種族なんかほぼ出てこなかったのに、いきなり変な多様性を見せ始めるんじゃない!!


 それと、人狼と狼獣人が被ってないか!?

 勘違いされない!?


『何を言っているのですが勇者よ。人狼と狼獣人では何もかも違うではありませんか』


「違うのぉ!? 訳わかんねえよ!」


 変なこだわりを見せるのをやめろ原作者!

 俺は内心で突っ込みつつ、仲間たちとともに祝勝会を行うことにした。


「ヴェローナと仲良くなることで、不死王と会うチャンスを早く得られそうだからな。俺も強くなったし。あ、そうそう。縮地の横のテキストの話だった」


『はいはい』


 ちょっといいお店に入り、今回もらった報酬を山分けにする。

 盗賊ギルドからのお金もあるので、かなりの額だ。

 本日は、ナルもチエリも豪遊するつもりらしい。


「ねえねえヴェローナは何が好き? 新人さんだし選ばせたげるよ」


「そうですよ。ここのお料理は系統が分かれていて、和洋中……」


「和!? 洋!? 中!?」


『勇者よ、話の途中で気を散らすのを止めてください。あなたはちょっと何かが起きるたびにツッコミしすぎですよ』


「突っ込むだろこれ!? この世界に和も洋も中も無いだろ!? 一つの大陸しか無い世界だぞ!?」


「では、私は……グーテン様から伺っていた郷土の料理ということで、和を」


「和!? 不死王の地元って日本なの!? 転生者ってこと!?」


『勇者ー!! 勇者よー!!』


 俺のほっぺを猛烈に突っつきまくるセレス!

 あっ、指が人差し指と中指の二本になってるじゃん!!

 信仰の力が増したんだな。


「悪い悪い。気を取り直してテキスト読んでいこう。ええとなになに? 縮地の条件は……。常時ダッシュしながら軽気功を百時間行う……と。はあ!? そんな条件、誰がこなせるんだよ!?」


 つんっとほっぺたをセレスの指がつっついた。


「俺でした」


『勇者、すごい速度で走り続けていましたからね。ついにあの異常な移動が累計百時間を超えたのですね。おめでとうございます』


「ありがとうがりがとう」


 そうこうしている内に、前菜のやみつきキャベツが運ばれてきた。

 キャベツにごま油が掛かっているやつである。

 あ、お通しなの?


 ファンタジー世界で?

 お通しでやみつきキャベツ!?

 ごま油!?

 っていうかこれ和食か!?


「ビールでーす。カシオレ二つでーす。ミルクでーす」


「カシスオレンジ!? この世界の食生活は本当に謎だ。今度厨房を見せてもらわないとな。いや、海の家の厨房は普通に焼きそば用の麺がビニール袋に入って確保されてたし、焼きそば用ソースがあったよな……」


「カシスオレンジ私とナルでーす」


「わーい! 甘いお酒大好き!」


「ビールは私ですわね」


 おおっ、ヴェローナが細腕に見合わぬ大型のジョッキを手にして……。

 じっと俺を見た。


「どうした」


「早く乾杯の音頭を。ビールの気が抜けてしまいます」


「なにぃーっ!! クールキャラと見せておいて乾杯を要求するだと!? 仕方ない……。間男を一人血祭りにあげた! 俺たちの戦いはここからだ! あとついでに三級昇格おめでとう! 乾杯!!」


「わけわかんないけどかんぱーい!!」


「かんぱいでーす!」


「乾杯ですわ」


 グラスが打ち合わされた。

 みんなでグッとドリンクを飲む。

 俺はどんな時でもNTRの発生に気を配るため、酒を飲むわけにはいかない。

 常時ミルクだ!


「ご注文のフライドポテトでーす」


「フライドポテトが和!? 和食なの!?」


 こうして、祝勝会は続くのだった。

 そしてこの場に、意外な人物が登場することになる。


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