第11話 いや、昨日は寝てましたが?
素早く医務室まで帰還し、寝ることにする。
ここのベッドは、自室のベッドよりも質がいいのだ。
自室は藁にシーツを被せたものだが、ここは綿を使っているからな。
「よし、無茶をして流石に体にガタが来たから、朝まで寝て回復だ。明日にはまだ訓練に行くぞ」
『生き急いでる! ですけど勇者よ。お陰であなたは素晴らしい速度でレベルアップをしているようですね』
「ステータス見たの? だろ? 本来のジョナサンのやり方だと、王国編が終わるまでにほとんどレベル上がらないんだ。それでガンガンNTRされる。そんなことは許しておけぬ」
メラメラと心を燃え立たせる俺である。
それはそうと、寝る前にレベルアップからのスキルポイントを割り振っておこう。
「ここはそろそろ防御を取っておきたい。次回サキュバスと再戦する時、あいつは絶対に範囲攻撃で誘惑とかしてくるからな」
『あっ、そう言えば光線状の誘惑しかしてきませんでしたね。範囲攻撃ができたのなら、勇者は危なかったでしょう?』
「遠当てで攻撃を飛ばすしかなかった。念の為に取っておいたが、テストはしてなかったからな! 上手くあいつの頭に血が上って、俺を集中攻撃してくれて助かった」
『常にカッとなって動いている方なのかと思っていました! 勇者よ、ちゃんと頭を使っていたのですね。私は感心しました!』
「うん、セレスが俺をそう言う目で見てたのは知ってた」
さあ、スキルポイントを割り振るのはっと……。
「防御術、これを鍛えていこうと思う」
「相変わらず剣術ではないのですね……」
「今回のスキルポイントでは、剣でサキュバスに勝てないからな! それにこう、俺が知っているゲームよりも全体的に難易度が上がっている。全NTRルート同時進行なんてその極みだ! 攻撃の手段はある程度確保したから、次は防御手段を手に入れて長期戦ができるようにだな……」
ポチポチと防御術にスキルポイントを割り振る。
パッシブの防御力アップ1、カウンター、防御力アップ2、精神防御1……というところでポイントが尽きた。
やはり、早く冒険者編に入って依頼を受け、スキルポイントを稼ぐ状態に持っていかねば……。
だが、原作でのジョナサンが騎士編から冒険者編に入るに当たって、マリーナと王国が時間凍結されるイベントを経過する必要があるのだった。
これ、本来ならバッドエンドなのだが、一度経験すると時間凍結を解除するルートが解放される。
今回の俺のルートは、全部が叩き込まれてると思うから、きっと時間凍結イベントが起こってそのまま解除ルート……冒険者編へ入るだろう。
そしてここでも、新たなNTRヒロインが追加される。
チエリを含めて、二人もだ!
……守らねばならない対象が増えるということか!?
マリーナは凍結するから安牌になるとしても……!!
ぐぬぬ……ぐぬぬぬぬ……!!
『悩んでいますね勇者よ。若人が悩むのはとても良いことです。悩んで悩んで答えを出すのです』
「とりあえず、体力維持のために寝ることにする。明日もまた何かイベントが起こりそうな気がするからな……」
『はい、おやすみなさい勇者よ。あなたの成長が私は楽しみですよ』
「そんな感じで囁いて! 入眠ASMRみたいで捗る……ああ~夢の世界が近づいてきた~」
『女神の声をなにかよこしまなことに使われているような……』
不服そうなセレスの声を聞きながら、俺は寝てしまった。
夢の中で、ジョナサン本体と出会った気がする。
奴はいじけていて、膝を抱えて丸くなっていた。
「そんなことでどうする! マリーナをまたNTRされるぞ!」
「どうせ僕はだめなんだ……! どれだけ繰り返しても、マリーナが他の男のものになってしまう……! そして、今度は最悪な世界になってしまった」
「えっ!? お前、世界をループさせてるの!? ああ、原作も幾つものルートでマリーナは寝取られるのだったな……。そうか、全てのバッドエンドルートの記憶があるな?」
「ある……。僕は……僕は無力だ……。何もできない……。こうして僕が閉じこもったから、君が僕の中に現れたんだ」
「なるほどなあ! 確かに異世界NTRパルメディアには、ハッピーエンドルートがない。いや、メリーバッドエンドで、マリーナが間男と逢瀬をするのを容認しながら夫婦生活をするトゥルーエンドがあるな」
「そんな! そんなの、あんまりじゃないか! 僕は……僕はずっとマリーナが好きだったのに!」
「変えられない運命みたいなのがジョナサンを縛っている。それは間違いないな! だから、俺がこの運命を片っ端から爆砕してやろう」
「えっ!?」
「詳しい話はしないが、俺はお前にとても世話になったんだ。お陰で賢者モードが続いている……。そろそろ俺も、真のハッピーエンドが見たくなったところなんだ」
「君は……君は運命を変えられるのか?」
「変えるんじゃない。真っ向から全部、ぶち砕いてやるんだ! しかしマリーナ、いい女だなあ……。寝取り男たちの気持ちが凄く良く分かる……」
「ぐぎぎ……き、君もマリーナを狙って……」
「何を言う! 今の俺はお前だ! お前も俺だ! 俺の目を使って物を見て、俺の体を使って世界を感じろ! 俺だけじゃない。お前も気張ってこの世界と運命をぶっ飛ばすんだよ!」
俺はジョナサンの手を取った。
彼が立ち上がり、まっすぐに俺の目を見てくる……。
というところで目覚めた。
「うーん、よだれを垂らしながら寝ているわね。やっぱり昨日助けてくれたのはジョナサンでは無いのかしら」
「ウワーッ!! 目覚めた瞬間にマリーナ!! おはよう!! 昨日はずっと寝ていたぞ!!」
「おはよう。朝から元気ね? こっちの方も……だけど」
「あっ!」
ちらっと俺の生理現象な下半身を見て、頬を赤くするマリーナなのだった。
いかーん!
エッチなものを感知すると、淫紋が発動するぞ!
案の定、もじもじしながら「じゃあ帰るわね。お大事にね」とマリーナが去っていくのだった。
くっそー、絶対に守ってやるからな!
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