第41話 アクダマス領
『あるじぃ! おみじゅがキラキラして臭くなくなったっち』
おもちが浄化された湖に、顔を突っ込んでいる。
『このみじゅ、気持ち良いっち!』
尻尾をご機嫌に揺らせながら、浄化された湖の水を飲むおもち。
さっきまで紫色してドロドロの水だったとは思えない輝き。
なんたって聖水らしいしね。
「謎の病気もこの湖の水でで治ったりしないかな?」
ピコン!
——アクダマス領で流行している病気は、レティシア様の浄化魔法と、【真・妖精の泉】の水があれば完治できます。
良かった! 治るんだ。
全てはアクダマスの領主が悪いんだもの。
領民たちに罪はない。
なので癒せるなら、癒してあげたい。
恐ろしい呪具を作って、ライオスや王妃様まで呪って、さらには領民たちまで病気にさせて、ほんとクソ領主だわ。
領民たちはとんだトバッチリだわ。
治せると分かって、本当に良かった。
「よし! お水を持っていこう」
ってこのお水、どうやって運ぶ?
普通に考えたら、何か入れ物に入れて無限収納に入れるでしょ?
水を入れる入れ物もないしなぁ……こんな時は叡智様。
ピコン!
——エアシェルターの応用で、空間魔法で見えない入れ物を作ります。そこに水を入れて収納できます。
「えっと、じゃあ……想像で大きな入れ物をイメージして見えない入れ物を作れば良いのかな?」
ピコン!
——はい。イメージです。その見えない入れ物に水を入れてください。
よっし、なんとなくだけど理解した。
私は知っている中で、一番大きな長方形の入れ物コンテナを想像した。
コンテナは輸送に使うだけではなく、コンテナを使ってカフェや事務所に作り変えたり、コンテナを重ねて家にしたりと色々使い勝手がいい大きな入れ物。
そのコンテナに水を入れるイメージをすると。
何にもないはずの空間に、水が溜まっていく。
凄い! 何これ!?
水がコンテナの形に溜まっていく。そこにコンテナはないのだけれど。
とりあえず、コンテナの形をした見えない入れ物に十個ほど水を入れ無限収納にしまった。
何が凄いって、無限収納に入れた瞬間水の容積が分かったこと。どれほどの水が空間収納に入ったのか瞬時に理解できた。
すごすぎる!
「ふぅ〜……」
達成感もあり、大きな安堵の一息をついた後。
「あれがアクダマス領かぁ……」
湖の右横にある領地に目を向ける。
あまりにもドロドロの湖に目を取られ、先にこっちの湖に来たけれど、目的地であるアクダマス領は目前。
領地に入るにはあの大きな門から入るのかな。
大きな扉は開いているので簡単に入れそうだ。
「よし! おもち、アクダマス領に行くよ」
『ぬぅ? 行くっちぃ? ……わりぇ、もう少し遊びたいっちぃ』
私が必死に水を集めていた時。どうやらおもちは、湖でバシャバシャと水遊びを楽しんでいたらしく。
湖をどんだけ楽しんでるんよ!
確かに前世でもおもちは、お風呂とかプールとか大好きだったけれど。
「いくの! みんなが先に来てるかも知れないからね」
残念そうなおもちの背に乗り、アクダマス領の門に向かうと、普通ならいるはずの門番がいない。
「なんで誰もいないの?」
恐る恐る、アクダマス領内に入ると、普通なら賑わっている領内も誰も歩いていない。お店も閉まっている。
これは……それほどの人が、謎の病気になっているってこと?
水はだってみんな毎日飲むから、アクダマス領の人たちが全員病気になっていてもおかしくない。
これは急がなきゃ!
とりあえずアクダマス領主邸に向かわないと。
多分あれだろう。黒くて一際目立つ建物が、街の一番奥にある場所で歪に目立っている。なんで真っ黒なんだろう?
なんとなくだけれど、気味が悪い。
「おもち、あの
『分かったっちぃ! あの黒くテカテカしたやつっちね』
おもちが高速で建物に向かって走ってくれる。
誰もいない街並みは走りやすく、あっという間に黒光している建物、アクダマス邸についた。
大きな入り口の門を開けて、中に入る。
何かあるといけないから、身体強化も忘れずに。
だけど、中に入って目に入ってきたのは。
「「「「「「姫!?」」」」」」
赤い狂騎士たちが、大きな広間で仁王立ちしていた。
何があったのぉぉ!?
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