第16話 試食会からの王子様

「チーズの美味しさを広める良いアイデアが閃いたんです!!」

「「え!?」」

「試食会をしようと思います!」

「「……シショクカイ?」」


 二人が私を驚いた表情で私を見てくる。

 試食会なんて、この世界では意味分からないものね。

 

「ええとですね。試食というのは、味見しやすいような小さなピザや、スプーンにリゾットを乗せて、少しだけ味わってもらうんですよ。これで美味しい、もっと食べたいって思ってもらったこっちのもんです! そこでいかにチーズが良いかアピールするんです」


 しまった。ちょっと熱弁しすぎたかも……


「ほう……それは確かに面白いですね。レティシア様はビックリするアイデアをお持ちですね」

「うんうん。賢いのう」


 良かった。私の熱意が伝わったようだ。


「明日、この村を私は出発してしまうんですが、その前に準備して試食会を大々的にしましょう」

「え? レシティア様はもう行って、しまわれるのですか?」

「それは寂しいのう。もっと遊びたかったのう」


 私も、せっかく仲良くなった二人と、すぐにお別れしなきゃ行けないのは寂しい。


「また、絶対に遊びにきますから! 約束です」


 二人と握手を交わし、ルイスさんの宿に戻った。


 宿に戻りルイスさんと明日の準備をしてベッドで休んだ。おもちは大きくて二階へ上がる階段が通れなかったので、一階にある広い食堂で休むことになった。

 おもちと出会ってからずっと一緒に寝ていたから寂しいな。

 その代わり、久々にお兄様たちと一緒のお部屋。

 お部屋に戻ると、お兄様たちはまだ興奮冷めやらずな感じでのチーズについての熱い話が絶えなかった。


 気に入ってもらえて良かった。


 明日の試食会はお兄様たちも手伝ってくれることになった。

 楽しみだなぁ……


「ふあぁ……おやすみなさ……い」


 私は寝台に寝転ぶと、意識を失うごとくすぐ眠りに落ちた。



★★★


 


「どうぞー! 試しに食べてください」

「チーズを使った新作メニューです」


 牛乳屋さんの店前に大きなテーブルを置き、(テーブルはルイスさんの食堂にあるものをお父様たちが運んでくれた)その上にピザやリゾットを並べる。さらにチーズフォンデュを作り、横に野菜やパンなど置いて自分でチーズに絡めて食べれるようにした。

 

 お兄様たちが、「チーズホンデュの食べ方や、宣伝は任せてくれ」と言ってくれたのでお願いすると。


 貴族のお兄様たちが宣伝したら、なんだなんだ? とあっという間に人だかりができた。


「ドーズお爺さんが作った最高のチーズで、美味しいチーズを作ったんです。みなさんお試しに試食しませんか?」


 チーズと聞いて、村人たちの反応はあまり良くなかったけれど、昨日ルイスさんの宿に泊まっていた人たちが「またあのうんまいやつが食べれるのか!?」と集まってきて、美味しそうに食べてくれるので、村人たちも我先にと態度が急変。


「うんまい! これがチーズなのか!?」

「美味しっ、ママぁもっと食べたいよぅ」

「チーズって伸びるんだね。伸びたらこんなにも濃厚なこくが」

「パサパサして飲み込みずらい、冬の時期の非常食ってイメージしかなかったけど、これはチーズ革命だ! 日持ちするわ、美味しいわ、って最高か!」


 チーズの試食会は大好評に終わった。


 チーズフォンデュやサラダなどは簡単に作れるので、村のみんなにチーズを親しんでもらおうと、みんなにレシピを配った。


 ピザとリゾットは、ルイスさんのお店でないと食べれないよう特別な料理にした。


 ルイスさんは宿の前に、ドーズのお店と看板をつけて、宿泊しなくてもピザやリゾットを持ち帰って食べれるように、テイクアウトのお店を作ると意気込んでいた。


 楽しみだな。


 ドーズお爺さんとルイスさん、そしてダノン村の人たちからは、メチャクチャ感謝された。


「レティシア様! また絶対に遊びにきてくださいね。この村でチーズを流行らせますからね」

「ワシも美味しいチーズ作って待っとるからのう」


 私たちは別れを惜しみながら、ダノン村を後にした。


「んふふ、大成功に終わって良かった」



 ★★★



 王都に向かう旅も終わりを告げ、やっと王都の大きな門が見えてきた。


 先にお父様が門番のところに向かいおもちの説明をしている。

 確かにビックリするよね。

 王都で、おもちが仲良しですって証明できる何かを作る予定。

 私は魔物使いではないのだけれど、魔物使いは使役した魔物に目印のアイテムを付けていた。前世でいうところの首輪だ。



 王都に着くと、私たちは王城にある一室に案内され、夜の凱旋パーティまでは、この豪華な部屋で待機となった。


ちなみに赤い騎士たちは、私たちとは別室。


 部屋で待っていると。扉がノックされお父様が呼び出され出ていった。


 三十分ほどしてお父様が眉間に皺を寄せて帰ってきた。


 何があったのだろう?


「レティ、ちょっとお父様ときてくれるかい?」

「え? ……はい」


 絶対何かあるよね?

 だってお父様の機嫌がメチャクチャ悪いのが分かる。


 私はお父様に案内された部屋に入ると。


 一人の少年が偉そうに座っていた。


 え!? この顔、知っている。幼いけれど、プラチナブロンドの髪に青と銀が混ざった瞳。この青と銀の瞳は王族にしか現れない。


 ——この人、レティシアの婚約者になるエリック王子だ!



★★★



とうとうエリック王子登場です。


いつも読んでいただきありがとうございます。

⭐︎や応援もありがとうございます!感謝

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