厄災の悪役令嬢レティシア・ドンバッセル 〜断罪!? 喜んでお受けしますわ(これでひっそりとスローライフができるぅ♪)〜
大福金@書籍発売中
第1話 ラスボスに転生!?
「レティシア・ドンバッセル。君にはガッカリだ」
「なんのことでしょうか? 身に覚えがありませんが?」
「何をしらばっくれて!? ここにいるミレーナに嫌がらせを色々したらしいな」
今日はみんなが集まる学園の卒業パーティだ。
私を罵倒しているこの男は、一応私の婚約者——エディバン王国第二王子エリック様。
そしてエリック様が親しげに肩を抱きしめている女性が、ミレーナ様。グリード伯爵家の令嬢である。
——全く話したことないですがね。
色んなところで私に嫌がらせをされたと、吹聴して言ってたのは
こうなることを私は望んでいたから。
「私は何もやっていません。ミレーナ様とは、今日お会いするのが初めてです」
「そんなっ! 私を噴水に突き飛ばしたり、魔法の授業の邪魔をしたり、他にも色々したじゃないですか!」
「……証拠はあるんですか?」
「急に噴水に突き飛ばされて、しょっ、証拠なんて! でも私が噴水でびしょ濡れになっている姿はみんなが見ています」
「そうですか」
もうこんな茶番は良いの! 早くあの言葉を言って。
私はそれを待っているんだから!
「レティシア、もう君とは婚約解消だ!」
——しゃあああああああああああああっ!! キタキタキタ! コレを待ってたの!
心の中でガッツポーズをとる。
「私たちの婚約は王命ですが、国王様の許可は?」
この王子が、勝手に婚約解消と言い出したってのは分かる。だけど、国王様の許可は? と聞いておかないと。
その理由は、私は国王様の事を気にしましたよ? あなたが勝手に言い出したんですよね? と周りにアピールしとかないと、後で国王様から何か言われた時に、私はちゃんと確認しましたよ。と言えるから。
「はんっ、そんなのは後で……そう、僕が報告するから心配しなくていい」
「了解しました。なら私は今日中に父ーーダクネル・ドンバッセルに婚約解消したと報告させていただきます」
「嫌がっても……はぇ? え、了解?」
エリック王子とミレーネ様は、あんぐり口を開けポカンとしている。
あまりにもすんなり事が進んで驚いているのだろう。
「では早く報告したいので、私は失礼します」
私は踵を翻し会場を後にする。
だめだニヤけてしまう。
だって私はずっとこの時を待っていたのだから!
「ヒャッハァァァ!!」
誰も周りにいない事を確認し、嬉しさの雄叫びを上げる。
今まで我慢してきたんだ。それくらい許してほしい。
私に汚名をきせた事は、今まで否定せずに黙っていたが、これから
もちろん婚約解消後は、ちゃんと名誉を戻してもらう。
領地に戻ったらスローライフを楽しむんだ。
はぁ……この世界に転生して、ここまで来るの長かった。
★★★
《十四年前レティシア二歳》
誰かが私を呼んでいる?
なんの声? 目をこすりながら開けると。
「レティ! よかったー……目を覚ましたっ、ぐすっ」
——はぇ!?
何が起こってるの? 目を覚ますと、大勢の人が私の周りに集まっている。
しかもみんな涙目で私を見ている。なんで?
私——ん? あれ? 誰だっけ?
そうだ【レティシア・ドンバッセル】これが
——今の?
今ってどー言うこと?
「あーーっ!! 思いだちたっ!」
「レレッ、レティ急に起き上がって大丈夫なの? 今さっき目を覚ましたばかりな……」
ガバって言葉がピッタリな勢いで、急に起き上がった私にみんなが驚いている。
泣きながら私のことをレティと愛称で呼んでいる綺麗な人は、私の母マーガレット・ドンバッセル。
「そうだぞ、二日間も目を覚まさなかったんだ。急に無理したらダメだ」
その横に立ち、オロオロと心配しているのがダクネル・ドンバッセル私の父。
「レティ! よかった」
「急に起き上がったりしちゃダメだよ」
「ほんとだよ!」
「目を覚ましてくれて良かった」
更には四人の兄たち。
みんなが私を心配している。
——全て思い出した。
私は転んだ拍子に噴水の角に頭をぶつけて、二日間寝込んでいた。
どうやら頭をぶつけた拍子に、私は前世の記憶を取り戻したようだ。
そのせいで現在脳内がぐちゃぐちゃで、少し記憶が混沌としているけども。
前世の最後の記憶。
確か……仕事帰り家に戻ると、家が燃えていて家の中に残されていた愛犬を救おうとして、燃えている家に入って行ったんだ。
そこからの記憶がないってことは、その時に死んだんだろう。
愛犬のおもちはどうなったんだろう。
気になる事が多すぎて、色々と頭を整理したい。
なんだけど、周りにこんなにも人がいては、整理できるものも出来ない。
どうやって……そうだ!
「あにょ、ちょっと横になりまちゅ」
私は再び横になり、疲れてますアピールをする。
「そうだな。目が覚めたばかりだもんな。いきなり騒がしくしたら疲れるな」
お父様が私の頭を撫でる。
「ゆっくり休むのよ」
お母様が私を優しく抱きしめる。
今世の私はみんなから大切にされ、愛されているようだ。
前世の私は孤児で、本当の親の温もりを知らない。子供の頃から人の顔色ばかり気にしていた。
無条件で愛されてるって幸せだな。
なんだか顔が綻ぶ。
家族が部屋を出て行った後、頭を整理するために紙とペンを用意し机に向かう。
今の私は二歳。鏡で見るその姿を一言で表すなら、愛らしいでしかない。
真っ赤に燃えるような艶のある髪の毛。金色に輝く瞳。
真珠のように艶々で真っ白なお肌。
見た目チートすぎる。
だけれど、気づいてしまった。
この美しい姿に、レティシア・ドンバッセルという名前。
前世で何度も何度も何度も見たし聞いた。
そう……この世界が、前世でめちゃくちゃハマったゲーム【エデン】であると。
最強と名を知らしめているドンバッセル辺境伯領。国の要だ。隣国から国を守り、近くにある新淵の森から溢れる魔獣たちを討伐している。
エンディバン王国随一の最強の強さを誇るのが、このドンバッセル領。
お父様やお兄様たちもみんな強い。
だけれど一番の最強がこの私。
厄災の悪役令嬢と呼ばれるレティシア・ドンバッセル。
このゲームの最強ラスボスである。
クリアするにはこの最強集団ドンバッセル家を倒し、最後に待ち構えるレティシアも倒さなくてはいけない。
どうにかドンバッセル家を倒せたとしても、後ろに控えるラスボスレティシアが強すぎて倒せない。
とにかく無理ゲーなのだ。
SNSでも一時#レティシアが強すぎて無理なんだが。が流行ったほどに誰もレティシアを倒せない。
クソゲーと言われてもおかしくないこのゲーム。
なのに大流行した。
その理由の一つが、無理にレティシアを倒さなくても楽しめるということ。
ゲームの始まりは魔法学園入学。その時に自分のキャラクターをクリエイトするんだけれど、
錬金術だったり、生産職だったりと色んな授業があり、そこで覚えた魔法や技術を使い、在学中に冒険者になったり、自分のお店を出しても良いのだ。
魔法学園で、自分のジョブにあった色々な訓練をしながら、好きなことが出来るというのが流行った一番の理由。
ドンバッセル領にさえ行かなければ、最強集団と戦う必要はないのだから。
このゲームを遊んでる人で、ラスボスレティシアを倒そうなんて考えている人は、もういないだろう。
そんなラスボスレティシアに私が転生!?
ありえない……。
とりあえず私はラスボスになりたくないし、知らない誰かと戦いたくもない。
と言うわけでラスボスルートにならないように、今覚えている前世の記憶を忘れないよう紙にメモり、ドンバッセル領で静かに暮らせるように努力するんだ!
★★★
久しぶりの新作です! よろしければブクマや★レビューで応援していただけると泣いて喜びます。
毎日更新頑張ります。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます