閑話 《スターチス》の名

 翌日。

 ルーカスは休憩時間に、図書館から借りて来た、図書館の中でも一番古い王国の歴史書の写しを読み漁っていた。

 もちろん、《スターチス村》と言う物が存在するかどうかを調べる為だ。

 そして記されている所によると、其処には驚くべき事が書かれていた。


『《スターチス》の名をかたる事は、貴族であっても許されない』


『スターチスは王家との約束の花であり、建国に深く関わった者に贈られた称号である』


 貴族の子女が学ぶ、近年の歴史書には書いていない史実だった。

 明らかに重要な事柄であるはずなのに、近年の歴史書から消されている事を考えると、其処には王家か、それに近しい者の意思が介在しているといっても良いだろう。


 ルーカスは古めかしい本を閉じると、ふう、と小さく息を吐いた。


(しかし、スターチスを名乗る者が居る以上、更に調べる必要がありそうだ)


 それが“本物”なら構わない。

 しかしその名を騙る“偽物”であるのなら、王家に報告する必要があるだろう。

 規則を重んじる彼はそう考えて、一旦それ以上の調査を諦めると、午後の巡回の準備を始めるのであった。

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