第3話 奇襲エトロフ空挺降下作戦
――これらの攻撃はきっかり同時攻撃で行われた――
【シコタン(色丹)島港湾空爆】
――二〇二五年六月一六日〇三〇〇(まるさんまるまる・午前三時)――
色丹島上空――曇天の空を大コウモリが乱舞する。
F35一個飛行隊十二機はゆっくりと斜古丹港へと舞い降りていった。
作戦は六機が艦船攻撃を行い、あと六機は上空援護――必要であれば攻撃に参加する。その後――弾薬のある機がクナシリ島攻撃に参加し、残りは基地に帰還、待機とする。
飛行隊長の佐々木三佐は突入命令を発した。
〈ブラックマンバより各機へ――全軍突撃せよ!〉
全機が目標へと向かって飛翔する。大小の民間船舶が一〇隻程度確認でき、軍艦・巡視船は四隻であった。
だが――F35が発射する前に、別方向からミサイルが飛んできた。
F35がリアルタイムの座標を送り――F2がその座標にミサイルを打ち込んだのだ。搭載ミサイルは九三式空対艦誘導弾である。
これにより駆逐艦一隻および国境警備艇・哨戒艇三隻を撃破・沈めた。
脅威を排除した飛行隊のうち、けっきょく三機が弾薬を撃ち尽くし帰投――九機はクナシリ島攻撃部隊の支援に向かった。
【エトロフ島奇襲攻撃】
〈作戦空域〉――2025年06月17日0255(まるにーごーごー、午前二時五十五分)――F35A制空隊――
――ミッキーマウスより子ネズミへ――ピート(ミッキーの敵役:ヤマネコ)は罠にハマった――ヒゲを切っちまえ!――
〈
これらはすべて英文であり、わかりやすいよう日本語表記にした。
作戦行動はすべてあらかじめ決められた隠語によって行われる。これからさらに二重三重の暗号がかけられ発信される。
制空隊は3時キッカリになるよう時間を読みつつ一斉にミサイルのトリガーを引いた。
――真っ暗な闇の中だが、
奇襲時は二十四機が二機ずつの分隊にわかれ――各々、別目標を攻撃する。
ステルスモードであるからレーダーには引っかからないはずだ。
もし映ったとしても鳥程度の大きさで判別できるわけがない。
そこで今回使うのが――対レーダーミサイルだ。
これはレーダー波を
まずはレーダーを潰さないと空挺隊員が、戦う前に丸焼けになってしまう。
吉井も落下傘訓練は習志野の空挺で受けたので、馴染みが深く世話になった人たちを死なせたくはなかった。
今回使用されるのは――AGM-88 HARMというミサイルで、これは148キロ先から狙える長射程対レーダーミサイルである。
HARMとは〈ハイ・スピード・アンチ・レディエーション・ミサイル〉の略である。
今ある全機――F35A三九機を動員した。
ステルス機であるので翼下には搭載できない。突起物を無くすために、すべてが胴体内に内蔵されるのだ。だから見た目がずん胴型になっている。しかもAGM-88 はけっこう大きく一発しか入らない。
――空域突入作戦開始――賽は投げられた――もう後戻りできない――
衛生画像より割り出されたレーダーサイトをまず潰すため二機ずつの班によって攻撃が開始された。
レーダー波を捕捉してそこに叩き込めば良いだけなので簡単だ。
隠密潜入はまったく気づかれることなく成功し、レーダーサイトにミサイルを叩き込み、速やかに離脱した。
その間一切の反撃はなく、ただジェットの爆音のみ辺りを震わせていた。
【別飛飛行場空襲――0300】
飛行場にはSU35(スホーイ35/戦闘攻撃機)が三機駐機していた。
まったく気づかれていない。――F35様さまだ。ステルス性能が素晴らしい。
地上攻撃の小隊が確認された三機のF35に襲いかかる。JDAMがGPS誘導でつぎつぎとSU35を破壊していった。
ロシアの老兵戦闘機はただの標的でしかなかった。
時を置かず――C2二機が少し離れた平地に侵入し、空挺一個中隊を産み落とした。――じつはこの前にフリーフォール(自由降下)によって誘導および情報偵察が潜入しており、敵情と降下に関わる現地情報を収集し円滑な降下誘導を行っていた。
バラバラと緑色の花を抱いて降下した隊員たちは速やかに滑走路に向けて突撃する。
通常は落下傘をグルグル巻き上げて持ち帰るが、実戦なのでそのまま飛ばないよう重しを乗せてすぐさま戦闘行動に移る。落下傘が風に舞って空挺兵が蜘蛛の巣状態になったら戦えない。
ろくな戦闘員もいないので銃を手に取るまもなく降伏した。
抵抗らしい抵抗もないまま飛行場を制圧――日本軍の手に落ちた。
要所を確保しつつ、つぎは西方向にある港も占領しなければならない。そして民間人も占領管理下に置かなければならない。場合によっては銃を突きつけるときもあるかも知れない。
空自の作戦要項では次のようになっている。
エトロフ島全域制空警戒――F35A
〈別飛飛行場―― 一個中隊 C130―― 4機〉
〈単冠湾右 ―― 六個中隊 C2 ――14機〉
〈単冠湾左 ―― 二個中隊 C130―― 8機〉 一個中隊は予備部隊とする
予備部隊というのは無駄とか余りとかいうわけではなく、非常に重要で、各戦闘エリアで穴が空いた場合、速やかに急行し火消しをするという役目があり、多めに準備しておいたほうが万全である。
【単冠湾周辺・陸軍基地空挺降下作戦――空挺団主力】
――轟~~~―― 漆黒の夜空に低く響く音がかすかに聞こえる。
巨大な翼の翼竜が羽ばたく。
――〇三二八(まるさんにーはち:3時28分)――空挺降下開始。
〈ミツバチからヒマワリへ……花びらは7――3枚飛ばせ、3枚飛ばせ……〉
――誘導小隊から1番機へ、風速7メートル、慎重に降下せよ――こんな意味である。
すでに空挺扉は開かれ、機内はもの凄い爆音の中だ。
――扉の横にある空挺ランプはまだ赤のままである――
この空挺ランプは空挺降下のためだけに設置されており、輸送機の機長の判断で、すべての状況により降下可能と判断し、このランプを赤から青へと切り替える。それと同時に空挺隊員が降下を開始するのだ。
降下長が両手を開いて上に上げる――総員立て!
〈ジェットの騒音でまったく聞こえないのですべて手信号で合図する〉
掛け声で全員の気合を入れ――
〈カンをかけ~~〉――両手でかける動作をする
〈装具点検~~〉――両手を上下動する
一、二、三、四、五、六、七――自身の点検――あごひもから始まり、太腿の股帯あたりまで、手で次々と触り確認する。点検と言っても一瞬なので触ることしか出来ない。
つづいて眼の前の隊員の後部落下傘等を点検する。
一、二、三、四、五、六、七――同じく動作とともに声を出して点検。
〈報告~~!〉――両掌で口の形を作り叫ぶ動作
異常なし!――最後尾から自分の番号を叫び、前者の太腿を叩き前に合図を送る。
――両翼人員の点検が終わる――
〈この位置まで前へ……!〉――降下長が両手を広げ兵員を空挺扉の位置まで詰める
降下員は空挺扉の赤ランプを見つめ、赤から青に変わるのを確認し――、
〈青!〉報告すると同時に――、
副降下長が〈降下―― ――!〉――降下指示が下り、つぎつぎと大空へと消える。
――大空に緑の花が咲いた。
一七機のC2輸送機から一二〇〇名の空挺主力が舞い降りた。
ちなみに
【単冠湾左飛行場空挺降下作戦】
八機のC130が南東方向より侵入――二個中隊四五一名の空挺隊員が空を舞った。
使っていないのか――一機も停まっていなかった。ヘリさえも見当たらない。武装兵士はおろか整備員や管制員など人っ子一人見当たらず――あっという間に無血占領した。
どうやら飛行場としてはあまり使われてないようであったが、予備飛行場として機能していたと推測される。なんなく日本軍の手に落ちた。
少し拍子抜けする気分だが――さっそく無傷の飛行場に大量の弾薬・物資・人員等を輸送できるので作戦進行に都合が良い。
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