5 監視カメラという名の人形

被害届を出そうと警察を呼ぶと、巡査は家の天井の隅に取り付けられたカメラを指摘した。


「監視カメラがあるなら映像を確認しましょう」


しかし調べてみると、家じゅうのカメラがダミーだと判明。本物に見えるよう作られた偽物で、録画機も配線もなく、記録は一秒も残っていない。まるで舞台の小道具のように、見た目だけを取り繕ったものだった。


巡査は肩をすくめた。「これじゃあ犯人は特定できませんね。設計図もないなんて、最近の建売はずさんですよ...」


警察が帰った後、悠斗は銀行での職務経験を思い返した。顧客の財産を守るため、何重ものセキュリティチェックがある。それなのに、自分の家にはまともな防犯対策すらないなんて。


「おかしいよ。普通の家じゃない」悠斗がつぶやく。「まるで誰でも出入りできる公民館みたいだ」


美咲は不安そうに窓の外を見た。「誰かが今も見てる気がする...」


夜になると、美咲は寝室に行くのを嫌がるようになった。金庫の前を通るたび、また誰かに荒らされているのではないかと恐怖で足がすくんだ。

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