いざ!参院選

政治家が選挙に恐怖するのは、民主制がきちんと機能している証明

首相官邸――三条総理の気分は4月春爛漫らんまんとならない。

山本官房長官も押し黙って座っている。


原因はまたしても帝都新聞。

今度は、年金保険料による「マッサージチェア購入問題」を一面トップで報じた。


―全国の厚生年金事務所に職員用マッサージチェア 原資は年金保険料―


国民の怒りは、またしても自国党政権に向けられる。


―金下は巨額脱税と東京アジサイ社の未公開株でガッポガッポ。

国民は公務員ために年金保険料を取られてスッカスカー


金下問題と年金問題のダブルパンチ。


マスコミ各社の世論調査は当然によろしくない。


三条内閣の支持率は21%~26%。

ついに支持率10%台が見え始めた。


低支持率に自国党国会議員も浮足立つ。


7月の参議院選挙が迫りつつある。


「自国党は初めて過半数割れするのではないか?」と浮足立つ者もいる。

が、切実なのは7月に改選を迎える参議院議員。


参院選で定数250議席の半数125議席が改選される。

自国党の改選数は71人。

この71人のうち何人が、赤じゅうたんをまた踏むことができるのか?


「サルは木から落ちてもサルだが、国会議員が落ちればただの人」


これは、自由国民党の結党に参加した政治家の言葉である。


―三条総理のせいで、自分が“ただの人”になってしまうのでは?―


この恐怖は民主国家の政治家にしかわからない。

残酷だ。

しかしのは、――証明とも言える。


ずっーーーと黙っていた山本官房長官がやっと口を開いた。


上殿うえどの前都知事が新党を作るようです」


かなり前からうわさはあった。

ついに“上殿前東京都知事が新党結成に動き出した”と首相官邸に情報が来た。


「そうですか。

イメージはすこぶる良い人ですねぇ」


総理はそう言った…が、現実はどうか?

イメージだけは良い男が、参院選を振り回す可能性はかなり高い。

本人に責任がないとは言え、三条総理はその良いイメージを持ってないのだから。


70代の三条総理に対し、まだ50代の上殿前都知事。

自国党派閥まみれの三条に対し、完全無党派で都知事選に勝利した上殿。

支持率が20%割れ目前でも政権にしがみつく三条に対し、2期8年でいさぎよく都知事を退任した上殿。


「本人が参議院選に出るの?」


「いいえ。上殿全都知事は党のトップになるけど、参議院選挙には出馬しないと聞いております」


「ならば、上殿新党は大きな風にはならないね」


「そうですね」


山本は、それ以上を言わなかった。


「私は総理を狙っています。だから次の衆議院選に出ますよ」と上殿がほざいていたことを。


首相官邸は反転攻勢のきっかけが欲しかった。

ので、これから対策を練る。


坂戸厚生大臣と厚生官僚3人。

そして、口が悪い政調会長は呼ばず、総務会長を呼ぶことにした。


猪熊いのくま政調会長がこの人選を知ったら「こんな奴らを集めたってロクな案が出て来ないだろうに!」とブチ切れたかもしれない。

しかしその猪熊が、中道なかみち元通商産業大臣の話を聞いて、三条政権を支える気力を失いつつあった。


三条政権の求心力が、急激に低下している。

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