第20話
「あのさ、その」
切華さんを見ていた三人が、俺に視線を向ける。
「どうした護仁?」
「皆は今日空いてたりとか、する?」
「今日?学校終わってからか?」
「うん、そう」
「余裕で空いてるが?」
拓也の言葉に同意して頷く翔太と啓介。つまりは三人共今日は暇だという訳だ。
「三人共さ、あのお祭りがあった所の近くに神社があるのは覚えてる?」
「神社?あーーあそこか懐かしいな」
「あったなー全然行って無いわ」
翔太と拓也は遠くを見ながら懐かしむ様子でそう言った。
「覚えてるなら良かった。久しぶりに皆でそこに集まらない?」
「神社に?でもあそこ普段全然人いないぞ?」
「そうそう、若い巫女さんも一度も見た事無いし」
「神社をなんだと思ってるんだお前は」
女に飢えている拓也に冷静に突っ込みを入れる啓介。そんな何気ない彼らの姿に少しだけ安心して笑ってしまう。
「いやその方がいいんだ。人は出来ればいない方が都合がいい」
「そうなのか?それだったら丁度いい場所ではあるな」
「…………」
啓介はすぐに察しがついたのか、黙ったまま隣にいる切華さんへ視線を送っていた。俺は切華さんを見てもう一度目を合わせた後、翔太、啓介、拓也の順番に見ていった。
「皆に、知ってもらいたい事があるんだ」
黙っていた啓介は一人唾を飲み込み、翔太と拓也の二人は不思議そうに顔を見合わせていた。
「うっわっ、なっつかしぃぃ」
「中学入ってから一回も来てなかったなここ」
後ろにいる俺と啓介と切華さんの三人は、久しぶりの神社にはしゃいでいる翔太と拓也の二人の姿に呆れながらも、その何処か普通とは違う光景を楽しんでいた。。
「たった三年とはいえ、こんなに懐かしく感じるもんなんだな」
「確かにね。そういえば切華さんはその、大丈夫?」
「大丈夫ですよ?こうして何処であっても一緒にいられるように、私も時間を掛けて来たんですから。それに今の私は護仁くんとちゃんと繋がっていますし」
俺の隣で啓介が噴き出す音が聞こえる。
「今繋がってるって言ったか!?」
あの冷静な啓介であっても、そういった事には初心らしい。
「いや違うからな?そういう意味じゃないから」
「そ、そうか。けどあまりそういう事は口に出さない方がいいと思うよ桐辻さん?」
「うふふ、そうですね気を付けます」
「俺は別に気にしないけどさ、あいつらの耳にそれが入ったら血の涙を流して発狂しそうだからな。面倒な事になるに決まってるから出来れば二人っきりの時だけにしてくれると助かるよ」
「…………」
啓介の言った事が簡単に想像出来てしまい俺は沈黙してしまう。翔太も拓也も根は本当に良いやつらなのだが、女が絡むと途端に面倒でうざったい存在へと変貌しまうのだ。
「分かったよ啓介。仮にそういう体験をしたとしても黙ってる事にするよ」
「あぁ、それがいい」
俺と啓介は固く手を握り合い同盟を結んだ。この先、仮に俺や啓介が男と女のそういう体験をしたとしても、あの二人には言わずに秘密にするという同盟を。
「護仁くんがしたいと言うのであれば、私はいつでも準備は出来ていますよ?」
隣から俺の顔を覗き込むようにして彼女がそんな事を言って来た。彼女のその言葉の衝撃に何も言えないまま黙って見つめていると、反対側にいる啓介が俺の肩に手を置いて言った。
「どうやら、一番乗りはお前になりそうだな護仁」
遠くでは、何も知らない翔太と拓也のはしゃぐ声が聞こえていた。
懐かしさも落ち着いて来た所で、俺達は念の為邪魔にならないよう境内の端へと移動して話をする事にした。
「はぁ、やっぱ巫女さんはいなかったな」
「そんな都合よく可愛い巫女さんがいる訳無いだろ、俺だっていて欲しいけどこればっかりは仕方が無い。とりあえず今日は護仁の話を聞こうぜ」
「そうだなそうしよう」
「それで?知ってもらいたい事ってのは何なんだ護仁?」
全員の視線が俺へと集まる。
「あの、それなんだけど、まずは約束して欲しいんだ」
「約束?」
「そう、ここにいる五人だけの秘密にするっていう約束」
翔太と拓也は顔を見合わせる。啓介は学校ですでに察していた事から表情は変わらないままだったが、緊張はしているようだった。
「分かった約束する」
「俺も」
「俺もだ」
翔太から拓也、最後に啓介の順で答えていく。三人はふざけている様子など微塵も無く、真剣な表情で俺が話し出すのを待っていた。
「俺が皆に知って欲しいのは彼女の、切華さんの事なんだ」
三人の視線が俺の隣で立っている彼女へと注がれる。俺も彼女の方を見て目を合わせる。俺と目を合わせた彼女は何も言わず一つだけ頷いた。
「翔太、啓介、拓也。彼女は――――――」
――――――あれ?
切華さんについて三人に打ち明けようとしたその時、拓也のそんな声が俺の言葉を遮った。
「どうした拓也?ん?」
全員が拓也の視線を追っていくと、着ている制服から中学生と思われる二人の女子生徒が境内を歩いている姿が目に入った。
「受験の事でもお願いに来たんかな?」
「いや、そんな風には見えないな」
翔太の言葉を啓介が即座に否定する。
「どう見ても何かを怖がってる。それも尋常じゃないくらいに」
啓介のその言葉と同時に、隣にいた彼女が俺の手を握った。
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