episode30 エレナvsキアラル
数時間後…
「おい!冷血な氷剣士が転入生に勝負を仕掛けたらしいぜ!」
「マジで!?あの氷剣士が直々に勝負を申し込んだのか!!」
「あぁ!しかも申し込まれたのがあの転入生なんだよ!」
試合場の観客席は相当な学生の数で埋まっていた。
それもそのはず、普段勝負に乗らないエレナが自分から戦いを申し込んだからだ。
さらに学院全体の噂で退学した僕が再び入学したこと、その再入学した僕が一人の女性を連れてきたことが既に広まっていた。
その関係で、キアラルのことを転入生だと認知されていた。
試合場は学生誰もが使えて、お互い対戦を認めたら合法に戦うことができる。
そのとき、試合の対戦の情報が学院中に自動的に広まるため、学生が集まるという仕組みだ。
さらに試合場は特別な結界が貼られており、周りの観客の声の遮断。
魔法、剣を防ぐことができ、試合中に致死量のダメージを受けると結界の外に出されるという安全に特化した場所になっている。
「キアラルさん、手加減はなしですわ。」
「えぇ…エレナちゃん、魔術もなしですよ。」
「えぇ、ズルは嫌いですから。」
二人で剣を構えて、お互いの技量を警戒しているのか距離をとっていた。
どっちが勝ってほしいとかそういうのはない。
むしろ二人がこの戦いで和解してくれるというなら、ぜひ戦ってほしいところだ。
だが、エレナの剣術も秀でておりキアラルの剣術なら勝てる見込みが見えない。
つまり、この戦いはどっちが勝ってもおかしくない。
――――――――――――――――――――――――――
「ではこれより、エレナ vs キアラルの模擬戦を始めます!両者、構え!」
目の前でキアラルさんは剣を構えつつも、どこか迷いのある目をしていた。
そんなんじゃエリオス君の横に立つ器はないわ。
エリオス君は剣術の才能も、魔術の才能もあるとは言いきれない。だから私が守ってきた。今更エリオス君の隣にいる座を譲れない。私1人でいい。
それに魔術の才能がない人がエリオス君を守れるのか。
その欠点を剣術で補えるのか、私自身気になっていた。
申し訳ないけどキアラルさん、あなたはここで倒されて、エリオス君の隣は私だけだと証明するわ。エリオス君は他の人に譲れない。
「試合…始め!!」
ごめんなさい、一撃で終わらせるわ。
そう突進しようとした瞬間、キアラルさんの姿が間合いに入ってきた。
「っ…!?!?」
急いで剣を握りしめて受け止めた…いっ…!?
何この衝撃…剣を受け止めただけで腕が痺れる…!それにしっかり握りしめてなかったら剣は弾き飛ばされていた。
慌てて間合いから走って離れた。
キアラルさんは私を獲物を狩るような鋭い瞳でこちらに走ってきた。
久しぶりに感じた、湧き上がる闘心もなければ、勝てる確信も持てない。負ける、殺されるという恐怖心に、体が震えた。
再びキアラルはこちらに間合いを詰めてきた。
冷静になれ…あの剣を受け流すしかない…!
そして受け流す態勢に入った。しかし、キアラルは受け流されるのを感じ取り、それに逆らうように剣をぶつけてきた。
あっ…!あまりの衝撃に剣を離してしまった。
地面に金属の音が鳴り響くと、それと同時に声が響いた。
「試合終了!勝者、キアラル!」
ま、負けた…初めて…。足に力が入らず、自然と崩れ落ちた。
魔術に自信はあるけど、剣術でも負けることはなかった。
でも自然と悔しくなかった、それにむしろ解放された気もした。キアラルさんの前では何も手が出せなかった。
受け止めるのが精一杯だし、剣を受け止めた手が痛かった。
痺れた手を見つめていると、キアラルさんは手を差し伸べてきた。
「エレナちゃん、次は魔術ありでやりましょ。エリオスから聞いてるよ、エレナは魔術がとても凄いって。」
「…いいのですか?あなたは魔術がないなら負けるんじゃ…。」
「いいの、負けて。これでおあいこってことで!」
「…都合が良い話ですね。でも悪くありませんわ。」
キアラルさんの手を掴んだ、さっきの迷いのある瞳、そして獲物を狩るような鋭い瞳とは違って、私を真っ直ぐで純粋な瞳で見ていた。
――――――――――――――――――――――――――――――
「2人ともお疲れ!エレナ、また次がんばろう…!」
「エリオス君、次は勝つから見ててね。」
そう言ってエレナは走り去った。
その時の表情は悔しそうにしてたが、どこか嬉しそうだった。
「…キアラル、試合場で何か話した?」
「ん?ただ次は魔術ありで戦おうって…。」
「そ、そう…?」
よく分からないが、2人の仲が少し縮んでいるならきっと意味のある試合になった。
とりあえずもうサンドイッチにはなりたくない、そう思った。
……これはあとで知る話だが、試合を見た何人かはエレナとキアラルに試合を申し込んだが、エレナは試合を断り、キアラルは剣術のみで全勝したらしい…。
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