第11話第二形態始動

了解です。それでは、第十一話をラノベ風に長めでお届けします。



「……東京タワー付近、再封鎖要請? 嘘だろ……」


翌朝。俺、風見迅は、まだ寝ぼけまなこでニュースアプリを眺めていた。


画面には、昨晩の“黒い影”――神喰いの触手片と思われる存在の出現が報じられ、さらに現在も断続的な魔力波の異常が確認されているという。


「昨日のアレ、本当に……触手の“破片”だったのかよ」


訓練施設であんな目に遭っておきながら、あれが“本体”ですらない。つまり俺は、あの影のほんの一端と殴り合ってただけってわけだ。


「……くそ、やっぱ化け物だな、神喰いってのは」


その時、スマホが震えた。


ユキ:試作Λ-04、データ分析完了。第二形態の試作に入るため研究所へ。朝食は出ません


「文章が冷たい! でもありがたい!」


とりあえず顔を洗ってから、指定された通りユキの研究所へ向かう。


---


ユキの研究所(見た目はおしゃれなコンテナ基地)


中に入ると、白衣を着たユキが眠そうに片目だけ開いて、液晶パネルをガン見していた。


「……早かったね。三十分の誤差、計算通り」


「出発時間まで予測されてたのかよ……」


「合理的だから」


いつものテンションだが、どこか目の奥が冴えている。ああ、この人、昨晩からずっと作業してたんだな。


「……昨日のΛ-04の稼働ログ。君の身体反応と魔力波形との連動が異常だった。とくにソードモード時の加速、空間歪曲が発生していた」


「空間が歪んだのは俺のせい?」


「正確には、君の“フィジカルギフテッド”がΛ-04のコアに干渉し、物理演算限界を突破した。その結果、時間軸にまでノイズが走った。これは想定外、でも面白い」


「褒め言葉だよな……?」


「むしろ感謝してる。これで第二形態に必要な条件が見えたから」


そう言って、ユキが新たに投影したホログラムには、より洗練され、鋭利になったΛ-04の新デザインが浮かび上がった。


「Λ-04 Ver.2――“オーバーリンクモデル”。通常形態に加えて、君の“全身筋組織”と直接神経接続する設計にする」


「えっ……つまり?」


「君の神経がそのまま、装備の神経になる。文字通り、装備が君の一部になるってこと。合理的でしょう?」


「合理的って言えば何でも許されると思うなよ!?」


だがその時、研究所内の通信モニターに緊急映像が映し出された。


『こちら警視庁特異災害対策部。至急、付近住民は非難を開始してください。東京タワー付近に“神喰いの本体片”と思われる存在が出現――』


「また出たのかよ!」


「本体片……!」


ユキが低く呟いた。


「今度の個体は、言語を持ち、自律行動してる……進化、してる?」


映像には、人型に近い影が映っていた。顔のような仮面、長い四肢。だが、その体表は“常に崩壊”しながら再生していた。


「アマネは!? あいつ現地に向かったりしてないか!?」


「……GPSは、塔の中」


「やっぱりか!」


俺はΛ-04を背負って、ドアを蹴破って飛び出した。


---


東京タワー、戦闘区域


瓦礫と化した歩道。その中心で、アマネが神喰いの本体片と対峙していた。


「お前の“情報”はもう得た。次は、心臓を寄越せ」


「断る。私の心臓は、彼のためにある」


言葉少なに、だが確かに放たれたアマネの声。


影はそれに応じて腕を無数の触手へと変え、アマネへと襲いかかる――その直前!


「間に合えええええ!!」


Λ-04ソードフォーム展開、一直線に飛び込む!


ガキィン!


振り下ろされた触手を一閃に斬り裂き、アマネの前に立つ。


「遅れてすまん、ヒーローはだいたい二拍くらい遅れて来るんでな」


「遅すぎ。あと一秒で死んでた」


「それはセリフのテンポ的にアウト」


冗談を飛ばしながらも、内心はギリギリだ。


「ユキ、聞こえるか!? Λ-04、オーバーリンク、テスト起動できるか!?」


《できるけど、脳神経への負荷が大きすぎる。最悪、死ぬ》


「……今更だな。やるしかねぇ」


その一言に、ユキがわずかに沈黙してから、言った。


《了解。リンク許可。風見迅、暴走、承認》


ピピ――ッと音が鳴り、Λ-04が形を変える。


刃が長くなり、骨格のようなパーツが俺の背から浮き上がる。


視界が冴え、空気が止まって見える。


「……よし、行くぜ。俺の“全部”で」


神喰いが吠える。


アマネが背を預ける。


そして、俺は――跳んだ。


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次回予告


第十二話『暴走リンク、Ω反応。神喰いを討て』

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