第2話ギフテッド!?はいでました。中二病ワード

第1章 第2話|ギフテッド? はい出ました中二病ワード


ダンジョンから帰還した俺は――まず、全力で地面に倒れ込んだ。


「ハァ……ハァ……マジで死ぬかと思った……!」


横で配信端末を握っていた御影イオリが、目をまん丸にして俺を見ていた。


「お前……マジで、ヤバいな……」


「褒めてんのかそれ?」


「褒めてるよ。なんせ、今の配信、同時視聴者数2万超えたからな」


「配信してたのかよッ!?」


俺は思わず叫んだ。

いや、確かに配信カメラらしき小型ドローンが一緒に入ってたけどさ!?


「いやいやいや、聞いてないから!? 俺の命かかったバイトだったんだけど!?」


「うん、バズったし10万追加で振り込んどくから許せ」


チョロっと言ってスマホをいじるイオリ。

その後ろで、俺の“神回避動画”がすでに切り抜かれて拡散されていた。


《#ノースキル高校生 #ガチで死にかけ #ダンジョンで覚醒 #フィジカルやばすぎ》

《折りたたみ傘で回避してて草》

《これ素でやってたらチートだろ……》


「バズるなぁ!? 勝手にスター作るなぁ!?」


---


俺は放心したまま、自宅の六畳一間に帰り着いた。

母さんは夜勤、俺は一人。


着替えもせずベッドに倒れ込み、天井を見上げながら呟いた。


「ギフテッド、ね……」


さっきイオリが言ってたワードが頭にこびりついて離れない。


《ギフテッド》――

超人的な肉体特性を先天的に持つ人間。

スキルシステムと関係ない、例外的な存在。

公式には存在が認められておらず、都市伝説扱いされてる。


「つまりアレだろ、“俺は特別だったんだ”系の……中二病設定ってやつ」


でも――

実際、今日の俺の動きは人間離れしていた。


あれがもし本物の“ギフテッド”なら。

俺は、モブじゃなくなる。


「……ないない。俺がそんな都合いい存在なわけ」


そう言いながらも、心臓の鼓動が速くなるのを感じていた。


---


次の日、登校した俺を待っていたのは――


「きゃー! ダンジョンの人だー!!」

「え、あの子がノースキルの伝説!? 本物!? 写真撮っていい!?」


――教室ではなかった。


なんか、学校の裏庭で囲まれてた。

女子生徒数名に。

謎のファンクラブが出来てた。


「俺何もしてないよね!? 死にかけただけだよね!?」


「そこがいいんじゃん!」

「ダンジョンで覚醒とか、少女漫画かよ!」


そう言って、スマホで俺の動画を流す彼女たち。

俺が空中で鉄パイプをスレスレでかわし、着地するあの瞬間。


「お、おぉぉ……マジで主役顔……」

「カッコイイ……!」

「現代の勇者……」

「早く第2話来てほしい……」


「いや、人生の話数数えんな!!」


---


逃げるように教室に戻ると、そこには御影イオリがニヤニヤして待っていた。


「よう、スター様。今日から“ギフテッド説濃厚高校生”って肩書で生きろよ」


「いらんわそんな肩書!」


「てか、お前の身体、本気で検査した方がいいかもな」


イオリはそう言って、タブレットを差し出した。


そこには、“国立スキル研究機構”のロゴと、仰々しいスカウトメールが表示されていた。


---


> 【ギフテッド適性観察希望】

>

> 貴殿の身体に、通常のスキル覚醒とは異なる反応が見られます。

>

> 特例制度により、ギフテッド候補としての登録を希望します。

>

> ※本登録は任意ですが、一定の監視・検査が行われます。


---


「は? 監視……?」


「まぁ、ギフテッドってのは公的には存在しない“例外”だからな」


イオリは真顔になった。


「この国のスキル制度は、ある意味“管理された才能”なんだよ。突然変異みたいな存在は、基本的に歓迎されない。けど、もしそれを使って“結果”を出したら――」


「……潰されるか、利用されるか、だろ?」


「そういうこった」


言いながら、イオリは小さく笑う。


「だからこそ、俺はお前の味方しとく。お前みたいなヤツ、絶対面白い」


---


放課後。


帰り道、川沿いのベンチでひとりぼんやりと風に吹かれていた。

脳裏に浮かぶのは、あの瞬間。

鉄パイプが落ちてきて、無意識に身体が跳んだあの感覚。


「あれが、俺の……力?」


風が吹く。

どこからか、鐘の音が聞こえた。

いや、違う。耳の中で“何か”が鳴っている。


(……黒瀬迅)


「!?」


誰かの声が――脳内に直接響いた。

思わず辺りを見回すが、誰もいない。


(来たか……“鍵”が目覚めた)


「誰だ……!?」


返事はなかった。

ただ、脳内に一瞬、赤黒いゲートのイメージが浮かんで、すぐに消えた。


「なんなんだよ、もう……!」


俺は胸に手を当てる。

そこには、うっすらと熱を持ったような違和感があった。


そして、その瞬間。スマホが震えた。


──《速報:東京都心、未確認ダンジョンゲート反応発生中》


見慣れない警報画面と、異常な数値が表示されていた。


「……始まってる?」


俺の、まだ知らない世界が。

そして、“俺自身”の謎が。


---


次回予告|第1章 第3話「スカウト? 監視? ギフテッド人生は茨道」


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