第25話 魔動車レース決勝
スタートの時間がやってきた。
(セツナ・レズマンコ)
では、いっちょ宣伝してきますか(ニヤッ)
(商人 狐獣人)
期待してます(ニヤッ)
(サティナ魔王国筆頭魔道士 ナディア・サティナ ダークエルフ)
企んでるよなぁ……何か……
(セツナ)
あれ?参戦しないの?
(サティナ魔王国近衛騎士団長 ガルマン・ゲイン 熊獣人)
私が近衛を代表して参戦する。
(セツナ)
皆んな参戦してよぉ〜。
(ガルマン・ゲイン近衛騎士団長)
なんでだ?
(セツナ)
盛り上がるから。
(サティナ魔王国近衛騎士団副団長 ギルナ・ゲオルグ 熊獣人)
本音は?
(セツナ)
売れるから。
(ガルマン・ゲイン近衛騎士団長)
まぁ初めての事だ、色々分からん事も多い。
いきなりより、まずは様子見だ。
(セツナ)
で、どうだった?
(ガルマン・ゲイン近衛騎士団長)
正直、ハマった。
これは楽しい、しかも集中力が要る分、訓練にもなる。
(セツナ)
という事で、皆んな買おうね(ニヤリ)
(ナディア・サティナ筆頭魔道士)
商人よねぇ……
準備ができ、全車ピットアウトしていく。
ピットロードの出口で、予選順に並びコースインする。
ペース魔動車を先頭にゆっくり周回していく。
車体には色々カラーリングが可能な為、魔動車ナンバー以外にも模様や家紋が描かれていて、誰がどの魔動車か分かるようになっている。
一周回ってスターティンググリッドに着く。
全車完了したところでランプが点灯する。
5、4、3、2、1、ブラックアウト!
お決まりのスタート方法を採用した。
"ローリングスタート"もあったんだが、とりあえず色々試そうとなり、一番分かりやすい"グリッドスタート"を選んだ。
一斉にスタートする魔動車。
踏みすぎて白煙を上げたり、振られたりする魔動車も居る。
逆にそれが盛り上がる。
そして1コーナーに雪崩れ込む。
(セツナ)
ここから始めますか、では、Show time!(ニヤッ)
スタートの混乱と1コーナーの雪崩れ込みに乗じて5位に順位を上げる。
そこからバトル開始!
結構攻め込むフリして追い立てるセツナ。
ある時にはメインストレートでスリップストリームからワイドになり、豪快に抜いていく。
(ナディア・サティナ筆頭魔道士)
これね、企んでたのって。
微妙に抜きつ抜かれつを演出しながら、確実に順位を上げていく。
確実に盛り上がる観客達、その中にセツナも居た。
徐々に順位が上がっていくんだ、しかも上位で。
注目されない方がおかしい。
セツナのピットには、何故か商人達もいる。
皆、盛り上がりながら、ニヤニヤしている。
(セツナ)
見ぃ〜つけたぁ〜(ニヤッ)
(ガルマン・ゲイン近衛騎士団長)
誰だ?!魔動車No.2?……セツナか!
(セツナ)
はーい♡
セツナはガルマンの魔動車を追い立てる。
そして残り5周、トップに押し上げた。
(セツナ)
ここからShow time 第二幕だよ(ニヤッ)
(ガルマン・ゲイン近衛騎士団長)
くっ、のせられてるな……
簡単に抜いたかと思えば、軽く失速してギリギリで抜かせる。
外から見ている限りでは、白熱した戦い、観客は盛り上がる!
(ガルマン・ゲイン近衛騎士団長)
クソッ、絶対遊ばれている!
ラスト3周、1コーナーで競り合いながら、前に行かせたセツナ。
(ガルマン・ゲイン近衛騎士団長)
一体なにを企んでるんだ?
後ろから果敢に?攻めてくるセツナ。
その顔はまさに…………凄っごく良い笑顔だ。
その頃、ピットでは……
(商人 狼獣人)
流石セツナ様、上手いですな。
(商人 狐獣人)
こんなの見せられたら、買うしかなくなりますよ。
(商人 豹獣人)
この興奮の主人公になれるんだからな、プライド高いお貴族には堪んないだろう。
(ナディア・サティナ筆頭魔道士)
アンタら、なんか企んでるよね(ジト目)
(商人達)
なんの事でしょうか(ニヤッ)
そうしていると、最終コーナーからセツナ達が立ち上がってきた。
ガルマン・ゲインにベタ付けで立ち上がってくるセツナ。
(ガルマン・ゲイン近衛騎士団長)
後ろを取られたか……
スリップストリームに入ったセツナ、しかし、なかなか行かない。
(ガルマン・ゲイン近衛騎士団長)
何やってんだ?もう抜けてただろ?
次の瞬間、横に飛び出すセツナ。
(ガルマン・ゲイン近衛騎士団長)
焦らしてたのか!
ラスト2周突入、1コーナーのブレーキング競争に持ち込むセツナ。
そこで"少し甘め"のブレーキと"少し浅め"の舵角を当てたセツナ。
その為、スルスルスルっと前に行くのだが……
(ガルマン・ゲイン近衛騎士団長)
くっ、やられたか……
速度が乗りすぎているセツナの魔動車は、出口に行くほど膨らんでいき、浅めの舵角もあって、コースから飛び出した。
(観客達)
ああぁぁぁっ!!(叫ぶ)
悲鳴のような歓声を上げる観客達。
トラップに捕まり、停止したセツナの魔動車。
ゆっくり動きだし、コースに戻ろうとする。
一気に15台に抜かれ、17位に落ちる。
しかし、そんなセツナ号に拍手が送られる。
コースに戻ったセツナは、ペースを上げる。
トップはそのままガルマン・ゲイン近衛騎士団長、ファイナルラップに突入する。
しかし、セツナが7台ごぼう抜きして10位で戻ってきた。
これには観客も熱狂する。
(商人 熊獣人)
流石、セツナ様!
(商人 狐獣人)
心得ておられますよね!
(商人 狼獣人)
最高のエンターテイナーですよ!
(ナディア・サティナ筆頭魔道士)
アンタらね……
そして更に抜いていき、ゴールライン手前でスリップストリームから抜け出したセツナは、前の魔動車を車体2/3抜いた状態でゴールし、4位になった。
トップ争いからコースを飛び出したが、残りわずかでごぼう抜き、しかし、残念ながら表彰台には届かず!
といった筋書きをその通りにやってのけた。
そうとは気付かない(当たり前だ)観客は、最高潮に熱狂した。
(商人 狐獣人)
これは主演賞ものですよ。
(商人 狼獣人)
最高の演出ですな。
(商人 豹獣人)
これは売れますよ、絶対!
(ナディア・サティナ筆頭魔道士)
はぁ……(ため息)
ヒーローインタビューにセツナが呼ばれる。
(セツナ)
悔しいけど、やらかした。
でも楽しかった、次は表彰台取るよ!
皆さんも一緒に楽しみませんか?
是非、一緒に走りましょう!!
凄まじい大歓声と拍手が起こる。
狙っていた貴族達は、今だとばかりに夫人にお願いする。
夫人の中でも、いわゆる"お転婆系"に属する方は、私もと購入意思を固めた。
(商人達)
流石です!セツナ様!(輝く目)
(ナディア・サティナ筆頭魔道士)
もう、何も言えないわ……(ため息)
表彰式が行われ、上位3人には、それに応じた大きさの旗と盾が送られた。
順位と獲得ポイント、トータルポイントが書かれた賞状は8位まで渡され、それ以下には順位が書かれた参戦証明書が渡された。
これも貴族達のプライドをくすぐる作戦の一つだったが、それも大当たりした。
"買った"だけではなく"レースに出た"、その勇気と財力を証明することになるからだ。
走るには"魔石"が要る、走り込む為の"サーキット使用料"も要る。
全てお金、それが払える財力を誇示できるからだ。
(商人 熊獣人)
お疲れ様でした、セツナ様。
(セツナ)
どうだった?
(商人 狐獣人)
もう、最高の宣伝ですよ。
(商人 狼獣人)
速報ですが、問い合わせが殺到していて、契約は30件成立しました(笑)
(セツナ)
それは良かった。
ただ、スプリントレースでは……
(商人 熊獣人)
今の数が限界ですな。
(セツナ)
くじ引きで30台、予選で6台落とすってのは?
"予選順位"と不通過と記載した書面を発行して。
(商人 狐獣人)
それなら、決勝でも証明書に予選順位を記載しませんか?
(セツナ)
どうだろ?
(商人 熊獣人)
お貴族は何でも自慢したがります、記載して煽るのも手かと(ニヤッ)
(セツナ)
なら、そうする?
日頃の小銭も大事よね(ニヤッ)
(商人 豹獣人)
おっしゃる通りです(ニヤッ)
(セツナ)
なら、更に煽ろう。
予選トップには、ボーナスポイント、1ポイントを与える。
(商人 熊獣人)
日頃の走り込みも重要になりますな(ニヤリ)
(セツナ)
だろ?(ニヤリ)
今回入ってくれたお店やレストランと交渉して、常設できないか相談してみよう。
サーキットの使用状況によっては更に儲かると思う。
(商人 狐獣人)
もちろん、お任せください。
両立させてみせます(ニヤリ)
(ナディア・サティナ筆頭魔道士)
アンタらねぇ……(遠い目)
表彰式からガルマン・ゲインが帰ってきた。
(ガルマン・ゲイン近衛騎士団長)
セツナ様!
(セツナ)
おめでとう!
(ガルマン・ゲイン近衛騎士団長)
おめでとうではありません!
絶対ワザとやったでしょう!
(セツナ)
なんの事かな?
でも、最高の宣伝になったよ。
(商人 熊獣人)
最高に盛り上がりましたからね(ニヤリ)
(商人 豹獣人)
問い合わせが凄いですし(ニヤリ)
(商人 狼獣人)
早くも新規購入をされた方も居ますし(ニヤリ)
(ナディア・サティナ筆頭魔道士)
まぁ、宣伝にはなってるわね。
忖度にはなってないわ。
(ガルマン・ゲイン近衛騎士団長)
しかし、接待には……
(商人達)
宣伝です!(血走り目)
(ガルマン・ゲイン近衛騎士団長)
あ、いや、その……分かった……(ため息)
(商人 エルフ)
しかし、セツナ様はこれからどうするんですか?
(セツナ)
影響が出ない程度に、積極的に参戦する。
キャラは"速いが壊れる"で。
勝つ時もあれば、ド派手にクラッシュしたりと派手に暴れて、頃合いを見て、燻し銀の優勝請負人的な位置を狙う。
魔動車の状態にもよるから、これからどんどん工房ができて種類が出てくるだろうし、貴族達も速くなる。
一人勝ちをセーブするのもそう長くないと思う。
それに、その方が面白い。
それまでは"暴れん方キャラ"でいくかな?
一人勝ちは周りも冷めるでしょ(ニヤッ)
(商人 ダークエルフ)
流石セツナ様!(ニヤッ)
(商人 サキュバス)
算盤の弾き方も、やり手の商人ですよ(ニヤッ)
(セツナ)
ある程度落ち着いたら、"ラリー"も始めよう。
これは路面も変えるから面白いよ。
(商人 鬼族)
路面も……ですか?
(セツナ)
サーキットみたいな石畳のみ、農道みたいな道、雪、氷、砂漠、そしてそれらのミックス。
(商人)
そんな事をしたら……
(セツナ)
サーキットのようには走れない。
そこで、魔動車を"滑らせながら、コントロールする"というテクニックがいるんだよ。
ある意味、サーキットと真逆。
だから、サーキットが不得意でもラリーで勝てるってのが出てくる。
(商人 狐獣人)
ゴクリ……
(セツナ)
それに応じた専用魔動車は必要だよね。
サーキット用、ラリー用。
そして耐久レース。
24刻耐久で走行距離を争う。
大体1チームドライバーは2、3人。
作業員が数人かな。
タイヤと魔石を交換しないといけなくなるから。
これも専用魔動車が要るよね。
ラリーでも"冒険ラリー"をやる。
砂漠を14日間かけて走るラリー。
これも専用の魔動車と支援車両が要る。
それと、魔動バイクの発売もやろう。
魔動バイクレースもしてね。
(商人 熊獣人)
当たれば凄い事になる!
莫大な儲けがでるぞ。
(セツナ)
その為にもこの魔動車レースを盛り上げて、流行らさないと。
(商人 狼獣人)
ですな、我々の売り込みにもかかってますな。
(工房主 熊獣人)
オレ達の開発、生産能力にもかかってるな。
(セツナ)
皆んなでガッツリ儲けよう!
(商人&工房主達)
おおぉぉぉっ!!
(ナディア・サティナ筆頭魔道士)
はぁ……まぁ、しっかり儲けてください。
支出も莫大ですから。
(ガルマン・ゲイン近衛騎士団長)
オレ達って、カモ?
(ギルナ・ゲオルグ近衛騎士団副団長)
そんな感じな気がします(ため息)
(セツナ)
買ってね(微笑み)
(ナディア・サティナ筆頭魔道士)
買わせますから、安心してください。
(ガルマン・ゲイン近衛騎士団長)
えっ?買わせる??
(ギルナ・ゲオルグ近衛騎士団副団長)
買うこと確定?!
(ナディア・サティナ筆頭魔道士)
買いなさいよ、アンタ達。
(ギルナ・ゲオルグ近衛騎士団副団長)
は、はぁ……
(ガルマン・ゲイン近衛騎士団長)
わ、分かった……
なんだかんだで買わされるガルマン・ゲインとギルナ・ゲオルグであった。
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