Story 44. 打ち解けていく六人
「
まだ残っているおにぎりを平らげるつもりなのか、
やってきたひまりに「なに?」と答えるより早く、ひまりが――薫の背中に体重をあずけて自撮りする。
「食事写真ありりー」
ひまりが画面をみせた。
ほっぺたをふくらませた薫と、クスクスと笑うひまり。
「モグはずモグ……だろ」
「また
「ゴクン……みてたのか――って、はずかしいだろ」
「じゃあ、笑って」
「ええっ?」
むしろ困惑する薫。
「じゃあ、5
「
カシャ――
こんどは「にぃーっ」と笑顔の薫とひまり。
歩邑は撮影にひと息ついて、山上からの景色をながめていた。
あいもかわらず
フェンスにもたれた
「あっちはあっちで、仲よくやってんのな」
ひまりが薫にくっついて、写真を撮っているところだった。
――ぷんすかぷくー!
そんな歩邑の反応を、知ってか知らでか、
「つきあってんだろ? あいつら」
――つきあってない!…………たぶん……
「
とつづけた木崎のことばは、歩邑の耳を素通りした。
――そんな風にみえるんだ……
衆目を気にせず薫とからむ、バレー部トリオ。
からかっているだけの
とはいえ、ふたりとも――村瀬ほどのあからさまなアプローチはしていない。
――どう思ってるのかな……
薫は――無邪気に笑っていた。
「ひまり、へーき?」
「足? ぜんぜん痛くないよー」
山をおりはじめたパーティー。
先行する誠也が――村瀬の相手をしながら、ときおりふり返る。ちょうど、こちらをみた。
「
ひまりが「だいじょーぶ」と手をふる。
「木崎はー?」
木崎は両腕で輪をつくり、誠也は親指をたてた右手を高くあげた。
ひまりがふーっと深呼吸する。
「でも、つかれたよー」
薫に向かっていった。
「おんぶしてー」
「姫からリクエストいただきましたあ!」
木崎がひやかす。
「真の力をみせるときが――」
「フツーに、あぶないから!」
「だねー」
悪ノリする薫と、マジメな歩邑と、失笑するひまり。
のぼりよりも打ち解けたようすで、四人がゆるゆるとくだっていく。
「皆川ー」
木崎が声をかけた。
カメラを向けられた歩邑は、ピースサインで笑う。
カシャ――
「マジ美人、ほれたわ~」
「おだててもなんもないよ」
「…………」
と、ちょっとムスッとする薫。
「富永ー」
いっぽうひまりは、大きく手と目をひらいてポーズした。
カシャ――
「マジかわ、見入るわ~」
「フフッ、ありがとー」
「つぎ! モッチまんなかで撮ってやんよ」
歩邑とひまりが、うれしそうに薫にくっつく。
「なんか……近くね?」
「気のせい、気のせい」と歩邑。
「アップで撮ってー」とひまり。
「いい顔してんのな……撮るべ」
カシャ――
「サンキュ」
と礼をいった薫に、木崎がスマホをわたす。
「交代! オレら撮って……って遠くね?」
「気のせい、気のせい」
ひまりが木崎に耳打ちする。
「歩邑が好きなの?」
うぐっと木崎がうめいて
「じゃ、撮るよー」
カシャ――
笑顔の歩邑と、赤面した木崎と、満足げなひまり。
ちょっと、きょどりながら木崎がいった。
「ライソ交換しとかね? 写真、送っから」
「いいよ」「だねー」
「ひさびさ、からだ動かしたー!」
「つかれた~! けど楽しかった」
「
ここちよい疲労を感じながら解散する。
「今日はみんなありがとう。そいじゃ解散!」
と誠也がしめた。
「おつかれさま~」
「また遊ぼうな!」「バイバーイ」
西地区の木崎とひまりは、誠也が案内して川向こうの道から帰った。
のこりのメンバーは、来た道をスーパーのほうへともどる。
村瀬が途中でわかれた。信号待ちで歩邑がいった。
「公園よってこ?」
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