Story 17. 個性派カルテット
「ムササビ!」
したり顔の
「空飛ぶネズミ……ううん、リスかも」
車内をぐるりみて、聴衆にうったえかける。
「ぴよーーんて飛ぶんだよ。見たくない?」
「見てみたい」
「見たいよな?」「おう」
けっこうな数の男子が釣れていた。チョロすぎるぞ、小五男子。
いや、歩邑のポイントをかせぎたいだけかもしれない。
“抑えて”のジェスチャーをする歩邑に――指導が飛んだ。
「すわって
「はいい、ごめんなさい……」
交代した
「うさぎを見まーす。そっくりだから、うちに」
「ピポン! 個人の感想です」
すかさずヨコヤリを入れた薫。効果音つきの豪華版だ。
「似てる?」
「そーかも」
「感想は自由だよな」
と反応はさまざま。
「もちきりだし、うちの話題で」
まんぞくげに佳奈はうなずいている。
そのポジティブさを見習いたいものだ。
マイクがつぎつぎとリレーされ、バス内を一周する。
いちばん人気はゾウだった。
ふたたびマイクをにぎった柳沢の声がひびく。
「――をすぎたので、到着まであと五分くらいね」
なかなかに
▽ ▽ ▽
「ヤバイ、おっきい~」
「あやかりたいもんだな」
歩邑と薫がいった。
正反対のリアクションをみせたのは佳奈とひまり。
「うっわ、ちっちゃ」
「ミニマム系だねー」
園に入ってすぐの四角い広場から
入口から広場までが
正面は遊園地につづいており、左は“そうげん”エリアに、右は“にっぽん”エリアにつづいている。
左にくだった松本班がやってきたのはゾウ舎。
親子のコラボを
生まれて数か月の子ゾウが、母ゾウの足のあいだを動きまわっている。
「めんこいの~」
佳奈が腕ぐみしてひたる。
シマウマが気になる歩邑は、道の向こうで身を乗りだしていた。
「おしりの
カピバラやミーアキャットもいる。
もう一〇分あとなら、
わずか二時間のフリータイム。
すべてのエリアをつぶさに見てまわることはできない。
寝てばかりのライオンにお別れして西フォーラムをすぎると、ふれあい広場にでた。
うさぎ・やぎ・ひつじとふれあえる人気スポットだ。
運よく体験の定員にすべりこんだ四人はブースに招かれる。
佳奈がわれ勝ちにスタンバると、スタッフがうさぎをひざにのせてくれた。
全身まっ白なうさぎだ。
「ほ~ら、そっくりだし」
佳奈はパネルの注意書きをよみながら、やさしく背中をなでる。
「かわいすぎる~、雪ちゃん」
「うちとおんなじ」
薫は得意がる佳奈をスルーして、歩邑に指摘した。
「“おもち”だそーだぞ」
「おもちちゃん! ますますかわい~」
「そうであろう」
佳奈には脱帽するしかない。
ひまりのひざにも、ちょこんとのった。
こんがりトースト
「わんぱくそーだな」
「松本みたく?」
ひまりもうれしそうだ。
「そこは
「じゃあ、おてんばでしょー」
談笑する薫とひまりに歩邑がわりこみ、
「小麦ちゃんもかわい~」
とまたしても名前をつけた。かってに。
「“クッキー”ちゃんだ」
「おいしそ~」
薫と歩邑の、かみあっているようで微妙にブレた
くわわったひまりは、なるほど大物だった。
「おいしいらしいよー、うさぎって」
「おい!」「おい!」
めったにきけない歩邑と薫のユニゾン。
ふれあい体験をまんきつした四人は、スタッフに礼をつげてブースをでた。
いわれたとおり手洗い場に向かう。
「かわいかった~」
「そうであろう」
「…………」
「うん、うんー」
まずは――佳奈の希望がかなった。
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