第14話 作戦会議① Tactical meeting 1

滅亡した旧バネゾラ王国

モレカイポ湖沿い

世界最大魔石採掘場近辺。

最前線・連合軍モレカイポ基地

鮮血姫到着直後

基地作戦室


バステオン大将の号令で宿舎内にあった作戦室に全員が集まった。

つい最近までほぼ冷戦戦争状態にあったこの世界の主な種族及び大国の精鋭中の精鋭たち。精鋭である以上、圧倒的な戦闘力を持つ厄介者たちだった。


オーヴイル中将は大きな魔法のモニターの前に立った。


「全員揃ったようなので、先ずはこの帰還の可能性0に等しい作戦概要を説明する」


「おい、おい・・・帰還できないじゃ困るよ、待っている人がいるんだぞ、な・・・ベレモンちゃん」


ローラン・レ・パシェーは大きな声を上げた後、従者の肩を大きく叩いた。


「痛いです・・・レ・パシェーさん」


従者は文句を言いだした。


「黙れ・・・話聞かないなら拷問をかける」


冷たい声でオーヴイル中将は騎士を叱った。


「おお・・・怖い魔族ちゃん・・俺は死ぬことができないけどね・・」


「死ななくても・・・地獄を味わうことになる」


中将は本気だった。


鮮血姫のミーラーが急に席を立ち、騎士が反応する前、思い切りその顔を蹴った。

蹴られた騎士は後ろへ飛ばされ、壁にぶつかった。

作戦会議に参加していた全員は凍り付いた。


「黙って聞け・・・命令だ!」


飛ばされた騎士が皮肉そうを言いたそうな表情で顔をさすりながら立ち上がった。


「失礼しました」


レ・パシェー騎士が大人しく自分の席に戻った。


「では、再開しますね・・・先ずはこれをご覧ください、魔法フィルターかけている映像です」


モニターに映ったのは空から撮られたギエナ高地の森林の映像だった。

その一番高い地区に渦巻くような黒いオーラが覆っていた。その中心に多重結界に守られていた古代の神殿があった。


「ここにはグールを指揮している何者か潜んでいるとみている。そのため爆撃機を使い、魔石爆弾を投下します。」


「結界は消失している短い間に僕たちは自由落下し、神殿に侵入するのだね」


ジョイナス・ペリーコンは嘘の笑顔を浮かべて、話した。


「そうだ・・・だが簡単ではないぞ、次の映像を見ろ」


モニターに映ったものは全員を驚かせた。


「見ての通り、知能が低いと思われるグールは対空兵器を持っている・・・我々同等の知能を持つ上位種か指導者なる何かがいる証拠だ」


対空砲、高射砲、ロケット弾とキャニスターが森林の中に設置されている映像だった。


「言うまでもないが、この映像を撮った偵察機が撃ち落された」


「それだけ防衛線がしっかりしているのならば、例えば我々が入ったところ、一瞬で滅ぼされる可能があるのですね」


ミーラーは話した。


「はい、その可能性は多いにあるが、それでもやらなければならない」


モニターの隣に立っていた軍服で緑色の髪をした顔色の悪い若い小人ドワーフの女性が前に出た。


「そこで我が隊の出番です」


「紹介する、全種族連合軍のアラシア・ガーテンダン少佐、彼女が率いる連合先兵隊がお前たちを守り、先に罠に引っ掛かり、お前たちが神殿の奥深くへ侵入する前に消滅しないように、肉の壁になる」


「使い捨てのは我々のはずではないか?」


ミーラーは質問した。


「少佐、説明してやれ」


小人ドワーフの女性は咳払いをした。


「我が隊は不治の病を患っている各種族や国家の退役軍人で構成されている・・全種族の医療技術と維持魔法で今回の作戦のために辛うじて生かされ、この世界の全生命体のために華々しく散る所存であります」


女性は小人ドワーフ式の敬礼をした。


「下がってよい、ガーテンダン少佐」


「ところで我々をあそこまで運ぶのはどんな飛行船?」


治癒師ドクターのシレイナ・ハイスーは質問した。


「いい質問だ、これから説明し、お見せします」


オーヴイル中将は珍しく笑顔を浮かべた。










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