第2話 霧の世界
意識が
暗闇の中を彷徨っていた私は、不意に地面の感触を思い出す。
丁度私の真下にあるみたいで、うつ伏せで眠っていた。
「ううっ……」
不思議な感覚だった。
私はうつ伏せになったまま、譫言のように呟いていた。
このままジッとしていても仕方がない。私は瞼を開け、体を起こした。
「た、助かったのかな?」
全身の動きを使って、何とか体を起こした。
全身が痛いけど、骨折とかはしていないみたい。
だけど全身打撲したみたいに痛くて、動くだけでもやっとだった。
「い、痛い……」
苦悶の表情を浮かべた私。
相当ダメージを受けたみたいで、いつの間にか変身が解除されていた。
「変身も解除されてるけど、倒せたのかな?」
変身が自動解除されているってことは、きっと倒せていない。
多分だけど、ワームホールがぶつかった衝撃で、空間が不安定になったのかな?
スワンの言葉を要約すると、きっとそんな感じで、私は周囲を見回した。
「それにしても、ここ何処かな?」
今更だけど、私は周りの景色がおかしいことに違和感を感じた。
確か怪人と戦っていたのはドームのステージ上。
だけどここは明らかに屋外で、もの凄く霧が深い。
景色何て見えなくて、私は心細かった。
「どうしてこんな所にいるんだろう?」
全く心当たりのない場所だった。
霧に覆われていて、ここが何処なのかさえ分からない。
おまけに一人ぼっちで、私は必死に腕輪を見つめた。
「スワン、聞こえてる?」
『ピピピピピ……なに?』
「スワン!」
私は
ずっと待機状態に入っていて、スワンと言葉が交わせなかった。
だけどようやく待機状態が終わったみたいで、お話ができるようになって安心する。
「もう、一人にしないでよ」
『ごめんね、結葉』
「ううん、いいよ。それでスワン、ここ何処かな?」
私は早速戻って来てくれたスワンに訊ねた。
今私達が居るのは一体何処なの?
きっとワームホールの影響で、どこか別の場所に飛ばされたと思う。
でもここが何処なのか、サッパリ分からなかった。
『検索するよ……該当なし』
「該当なし?」
該当なしってことは、検索して
如何してそんなことになったのかな? つまり、ここまできりに覆われた場所、私達の暮らしている世界の地球には存在しないってことかな?
頭を抱えてしまうと、私に不安が押し寄せる。
「該当なしってことは、何処でも無い場所ってこと?」
『そうだね。何所でもない場所……?』
スワンでさえ困っていた。
高度な自己成長型AIなのに、考え込んで黙っちゃった。
こんな時、相棒である私がなにをするべきなのかな?
もちろん、そんなの決まってる。ピコンと頭の上に電球を灯した。
「それって凄いってことだよね!」
私は不安何て簡単に振り払ってしまった。
寧ろ楽しくて仕方がなくて、私はニコニコ笑顔になる。
こんな何所でも無い場所なんて、そう簡単に行ける筈もない。
私は気持ちが昂ると、頭の中がお花畑になる。
「コレって凄いよね。大発見だよ!」
『楽しそうだね、結葉』
「もちろんだよ。こんな最悪な状況を楽しまないと、面白くないでしょ?」
正直、この状況から抜け出したかった。
だけどそう上手く行かないのは分かっているよ。
何処にいるのかも、如何してこんな場所で目が覚めたのかも、全く分からない。
それでも私は今を楽しむことを優先して、気持ちだけでも負けないことを選んだ。
『結葉らしいね』
「私らしくないと、つまらないでしょ?」
いつだって、私は私。私らしくない行動はしない。
そんなことをし始めたら、何にも楽しくなくなっちゃう。
それが分かっているからかな? 私は私らしい行動を考えて、とにかく突き詰めた。
どんな逆境だって楽しまないと損だからね。
「そうだ、スワン。変身ってできるかな?」
私はふとスワンに訊ねてみた。
変身をするには相棒に力が必要になる。
あれからどれくらい時間が経ったのかは分からないけれど、変身出来たら心強い。
『今は無理だよ。変身が強制解除されたみたいだから、再構築に時間が掛かるから』
「そっか。無理なんだね」
変身を一度解除すると、再変身までは時間が掛かる。
しかも今回は珍しく強制解除を起こしちゃった。
鎧を再構築するまで時間も掛かるみたいで、変身は出来ない。
「それじゃあどうしようかな……」
私は不意に考えてしまった。
変身ができないとなると、ちょっと怖い。
万が一の保険が使えなくなって、私は困り顔を浮かべる。
「とりあえず、辺りを散策してみようよ」
私はスワンに提案した。
だけど流石は高度なAIのスワンだよ。
私の冒険したい心を抑え込んだ。
『NO、結葉』
「ダメなの?」
『ダメだよ、そんな危険な真似をして、取り返しが付かなくなったらどうするの?』
スワンは正しいことを言った。
確かに正論かもしれないなと、私も思う。
だけどずっとこんな霧の深い場所で座り込んでいてもダメ。
その内お腹も空いて、眠くなっちゃうかもしれないでしょ?
「それじゃあどうするの?」
『そうだね。もう少し様子を見て……』
スワンは“様子見”を選んだみたい。
それって、何にも解決していないよね?
私はムッとした表情を浮かべると、素早く立ち上がった。
「そんなのらしくないよね!」
私は心を奮い立たせた。
衣装を着たまま、フリルを軽く払う。
『ダメ、結葉』
「大丈夫。少しだけだから」
私は危険に飛び込もうとしていた。
それをスワンは全力で止めようとする。
だけどもうダメ。私、お腹空いて来ちゃった。
このまま座り込んでいても変わらないなら、少し危険でも飛び込んでみる。
それが私の選んだ答えだから。
「そうと決めたら、どっちに行こうかな?」
私は霧の中を闇雲に歩き回るのは怖い。
躊躇ってキョロキョロ見回した。
そんな中、とりあえず足を踏み出してみようとした。
その時だった……
「「お姉ちゃん、そっちに行っちゃダメだよ」さん、そっちは行ったらダメだよ」
突然聞こえてきたのは子供の声だった。
私のことを引き留めると、クルンと振り返ってみる。
そこには確かに子供がいた。しかも可愛い少女達。
だけど怪しい。何だろう、ちょっと変で独特の雰囲気を纏っていた。
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