第14話
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🩸 第14話:もう一度のチャンス
リカはサトル・アカツキの目の前に立ち、氷のような視線を彼に向けた。
リカ(冷たい声で):「最後の言葉は?」
すぐに兵士たちがサトルの前に飛び出し、彼を守ろうとする。
兵士たち:「ご安心ください、サトル・アカツキ様!我々が必ずお守りします!」
リカはまばたきひとつせずに言った。
リカ:「…じゃあ、言いたいことは何もないのね。」
一人の兵士が怒りに満ちた声で叫んだ。
兵士:「このクソ奴隷め、調子に乗るなよ!」
そして一斉にリカへ襲いかかる――
だがその瞬間、リカは静かに片手を上げた。
リカ(低く):「虚無の重力。」
彼女は二本の指を地面に向けて下ろす。
すると、目に見えない力が兵士たちを地面に叩きつけた。
まるで何千キロの重さが彼らの背中にのしかかっているかのように。
呻き声と骨のきしむ音が空気を満たす中――
リカ(囁くように):「潰れろ。」
肉と骨の砕ける音が響き、やがて――静寂。
ユウタは建物の上からその光景を見下ろしていた。
ユウタ(心の中):「…ヤバい。早くこの領域から脱出しないと。でも、できるのか?」
彼は身を隠しながら動こうとした――が、その時。
リカ(静かに):「そこにいるの、わかってる。出てきて。あなたには何もしない。」
ユウタは凍りついた。
ユウタ(心の中):「…なんで!?気配遮断スキル、完璧だったはず…まさか、この領域、内部の存在すべてを感知できるのか?」
しぶしぶ壁の陰から出ると、リカの顔が見えた。
そして彼女の目から流れる涙――その静かな嗚咽が、彼を刺す。
リカ(泣きながら):「…私、きっと気持ち悪いよね…?一瞬であんなに人を殺して…きっと、家族がいた人もいたのに…」
ユウタ(心の中):「…最低だ、俺。逃げようとしてた。こんな時に、彼女を一人にして…」
ユウタ:「君は間違ってない。掃除しただけだ。腐ったゴミを、この世界から取り除いただけだ。
あいつらがこれからどれだけ罪を犯すつもりだったか、君には分からない。でも、君が止めた。救ったんだ。」
リカ:「…じゃあ、私は悪いこと、してないの?」
ユウタは手を差し出す。
ユウタ:「来て。一緒に行こう。君が本当にいるべき場所へ。」
リカはその手を両手で強く握り、涙をあふれさせた。
リカ:「もう耐えられない…なんで私だけ、こんなに苦しまなきゃいけないの…?」
ユウタ:「もう終わりだ。これからは、全てを取り戻す時だ。俺が、君を導く。」
リカはうなずいた。ユウタが手を取ると、霧の中からポータルが現れた。
二人はその中へ――
◆◇◆
そこはまるで異世界。
叫びも、痛みも、搾取もない世界。
リカ:「ここは…どこ…?」
ユウタ:「願いが叶う場所だ。」
二人は村を歩く。そこには、多くの半人たちがいた。
笑い、話し、自由に生きている。
リカ:「これだけの半人…ここで何してるの…?」
ユウタ:「“仮面の者”を知ってるか?奴隷商人たちを壊滅させたやつ。」
リカ:「聞いたことある…まさか…ここにいるの?」
ユウタ(眉をひそめて):「俺だ。」
リカ(驚愕):「えっ…!?でも、あなたってランクEじゃ…ありえない…!」
ユウタ:「気配遮断スキルでランクを偽ってただけ。実際はランクAだ。」
リカ:「…こんなこと、いつまでできるの?いつか人間たちはここにも来る。欲望に終わりなんてない。」
ユウタ:「だからこそ、力が必要なんだ。もっと強くなって、全てを守るために。…君も、俺の力の一部になってくれるか?」
リカ:「奪われたものを取り戻せるなら、何だってする。」
リカは語り始める――
リカ:「私は、パラダイス王国の王女だった。
我が国は、科学も軍事も他国に引けを取らなかった。だが、唯一違ったのは、半人への優しさ――
そのせいで、他国の半人たちが我が国に逃げてきた。
そして、三大国がそれに激怒して南から奇襲を仕掛けてきた。
その隙を突いて、魔族の王が北から襲撃してきたの。
父は全軍を南へ送ったけど、すぐに宮殿まで敵が来た。
逃がそうとしてくれたけど――間に合わなかった。
両親と姉が…私の目の前で殺された。
何もできなかった。でも、突然、体の中から何かが爆発して――」
リカ(涙交じりに):「『天空の盾、展開』って叫んだら、全員吹っ飛んだの。
次に、『虚無の重力』って叫んで…周囲の敵が全員、地面に押し潰された。
でも――家族はもう…間に合わなかった。」
リカ:「気がついたら、私は奴隷として売られてて、あの図書館に送られていたの…
でも、私は信じてる。姉はまだ生きてる。いつか、故郷を取り戻す。」
ユウタ:「…つらい人生だったな。でも、俺のもとにいれば、必ず全てを取り戻せる。」
リカは涙を浮かべながら、静かにうなずいた。
ユウタ(心の中):「なるほど…パラダイス王国は今、半分が魔族の支配下、半分が人間の占領地か…
両方ともそこを軍事基地として使って、国民は奴隷にされてる…」
ユウタ:「とりあえず、図書館に戻って。情報を集めてくれ。」
リカ:「でも…貴族の一人を殺してしまったから、もう戻れないかも…」
ユウタ:「心配いらない。手下を送って、痕跡はすべて消させた。」
リカはユウタの前で片膝をつき、忠誠を誓う。
ユウタ:「よし。じゃあ、そろそろこの異界を出よう。明日から忙しくなる。」
リカ:「はい、ユウタ様。」
ユウタ(苦笑しながら):「人間の前では“様”はやめてくれよ。怪しまれる。」
リカ:「は、はい…」
🩸 つづく
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