第12.1話 ハプとツラノと蜂の巣と

 ハプとツラノは蜂の巣の前にいた。


「そんなに気に入ったの」


 ハプが樽から蜂蜜をすくいながら、瓶に詰めていく。


「そりゃあね。同じ場所に巣ができるだけでも珍しいのに、巣を繋げて一緒に暮らしているなんて、なかなかお目にかかれないよ」


 ツラノは巣からようやく目を離すと、蜂蜜の瓶を見る。


「巣もそうだけれど、蜂蜜の色はちゃんと分かれているね」


「そうなのよね。巣が繋がってはいるけれど、一緒に巣を作ったり、蜂蜜を作ったりはしないみたい。残念」


 ハプの小さな溜息にツラノが笑う。


「彼らなりに線引きがあるんだろう。必要なものだけをお互いから貸し借りできれば、それ以上でも以下でも無い方が良いのが自然界のような気がするよ」


 あら!とハプがツラノを見る。


「それじゃあ、ツラノさんからは何をいただこうかしらね」


 ハプがニヤリとイタズラっぽく言うと、ツラノが目を丸くする。


「宿代かい?うーん、そうだね、それじゃあ夜ご飯は僕が作ろうかな。トマテのシチューが得意なんだ」


「まぁいいわね!楽しみにしているわ」


 2人が話している上で、蜂が1匹巣から飛び出すと、まだ蓋がされてない瓶の縁にとまって、中の蜂蜜をのぞいていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る