熟考
席替えで距離ができて心の距離まで離れた気がした。
「このまま、何もせずにフェードアウトか……?」
「いや、そんな結末、絶対にごめんだ」
ある日の昼休み、壮太は自分の席でどうやって話しかけるか作戦を立てていた。そのときふと約10年前の記憶が降ってきた。
[『今日は先生出張だから、わからない問題があったり、小さなトラブルがあったときはまずはミニティーチャー係に相談してね』そう言って先生は学校を出ていった。次の授業は自習になり算数のプリントをやることになった。俺は当時dlやmlの単位換算に苦戦していた。自習監督の先生は別の児童で精一杯。俺が困った時にミニティーチャー係の友達が優しく話しかけて変換のコツを教えてくれた。最終的に俺は単位変換が得意になった]
それだ!!
壮太の頭の中の豆電球はピカッと光った。この案めちゃくちゃいい。
「ミニティーチャー作戦、いやネーミングセンスが小学生で止まってて終わっている。スペルはmini teacher 頭文字を略してMT。車のトランスミッションっぽくてカッコいいだろ……」誰にもバレずに、自然な流れで彼女に近づける唯一の方法。「高校生の本業は勉強!!」あの教師系配信者も言ってた。わからないところを教えて、会話する。それが作戦の核。
しかも運命は、壮太に味方していた。
明日の5時間目、古文のとある文章の品詞分解の授業だ。この授業では友達同士話し合って品詞分解について理解を深める時間がある。なぜだがこの時間は立ち歩いて話していい時間が設けられていた。
壮太は塾に通っていて助動詞、助詞、古文単語はある程度は網羅している。一方愛美の方は唯一古文が苦手という噂を聞いている。
これ以上ない条件が揃っていた。
「これは……行ける。行けるぞ……!」
MT作戦実行まであと24時間
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