【書籍化・第1章完】無口な俺が深夜に通話しているのは、クラスで1番美人な優等生でした

六畳のえる

プロローグ

「ねえ、よしのさん。漫画結構読んでるって前に話してたでしょ。これ面白いから、良かったら読んでみて」

「えっ、ありがとう! チェックしてみる!」


 グループのみんなに向かってスマホの画面を見せた男子にお礼を言いつつ、桜さんは自分のスマホにタイトルをメモした。


「桜さん、この作者の作品、好きだって言ってたもんね」

 俺がそう言うと、彼女は「そうそう」と明るく微笑む。


六久原むくはら君、覚えててくれたんだ」

「みんな、恋愛系のオススメ教えて! ワタシ最近、恋愛成分が足りてなくて」


 別の女子が訊いて、みんなでワイワイと紹介していくうちに次の授業を告げるチャイムが鳴って、お喋りは解散になる。


 そして桜さんは自分の席に戻る途中、俺の近くまで来て、そっと囁いた。


「また後で、六久原君のオススメも教えてね。私、知りたいな」

「うん、もちろん」


 俺は少し前まで、クラスで全く話せない、「歩く空気」だった。


 でも今はこんな風に、学校中で人気の女子と、毎日仲良く話せるようになっている。しかも、この関係はみんなにはナイショ。夜の男子が羨ましがること間違いなしの学校生活だ。


 なんで俺がこんなハッピーな思いをできているのか。


 それは……

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