第14話『奈落の玉座と、死者たちの王』

死者の王の契約を刻んだ骸骨は、地底の深奥へと足を踏み入れた。


この階層に生きた者はいない。

存在するのは、かつて“魔王の座”を狙い、敗れた者たちの亡骸と怨念。

魔法すらまともに届かない濃密な瘴気が、空間を腐らせている。


──そしてその中心に、王の如き玉座があった。


だがそこには、主の姿はなかった。


否、主はいた。


玉座そのものが、“死せる王”の亡骸であった。


【特異遺構:奈落の王座サルファル=トロネ

▶魔王候補でありながら、進化に失敗した者が変じた“不滅の椅子”

▶座する者は、彼の遺志と力を継ぐことができる

▶代償:精神汚染/過去の王の意志の混濁影響


骸骨はその場に立ち、何かを感じ取る。


──怒り。

──諦め。

──それでも、誰かを守ろうとした想い。


「……あんたも、裏切られたんだな」


玉座が微かに反応する。


骸骨は一歩、また一歩と近づき、そして静かに──その王座に座った。


瞬間、意識が反転する。


脳がないはずの骸骨に、無数の記憶が流れ込んできた。


──過去。

──奈落の王と呼ばれた者の絶叫。

──同じく、魔王の座を目指し、仲間に裏切られた者の最後。


【スキル継承:怨憶剣術グリムロード・アーツ

▶特性:怒り・未練・裏切りの感情に反応し、威力が増加

▶進化連結:契約スキル《リッチ・オス》との連動により魂属性魔法を付与可能


【称号獲得:奈落継承者】


だがそのとき。


虚空に声が響く。


「新たなる王か……ずいぶんと小さな器だな」


闇の中から現れたのは──奈落に従う亡霊たち。


否。


彼らはすべて、かつて“王を裏切った者たち”のなれの果てだった。


「王位を継ぐというのなら、我らを討ち果たしてみせろ」


──奈落の試練、発動。


骸骨は立ち上がる。

背後の王座が青白く輝き、契約の針が再び魂に刻まれる。


「俺は、もう騙されない。だが──信じたことは後悔しない」


片手に霧を帯びた剣が現れる。

骨の腕が掲げたその剣は、死者たちの怨念を吸い上げるように脈動していた。


亡霊たちが突撃してくる。


骸骨の剣が閃く。


その一閃が、過去の怨恨を断ち切る。


「来いよ……死者ども」


「新しい王の、最初の命令だ──ここで、静かに眠れ」


──次回、『第15話:骨の王、はじめての命令』へ続く。


───◇───


🪓あとがき

ついに主人公が“玉座”を得ました。ですが、それは単なる権力の象徴ではなく、怨念と裏切りの継承でもあります。

この先、彼がどこまで自分自身を保ち続けられるのか──次回は骨の王としての初戦闘にご期待ください。


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引き続きご愛読よろしくお願いします!


───◇───

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