第二章:エルリア王国編
16話:二人のエルフ
ガレア王国を出て暫く経つ、僕達三人はもうとっくに次の国へ到着して…いる訳ではなく。
「何処だよここーーー!!」
アデラが叫ぶ。
叫んだ声は反響して何度も聞こえてくる。
「叫んだって仕方ないよ、て言うか元を辿ればアデラのせいだからね」
僕は少しため息を吐きながら話す。
「んだと!?」
アデラが凄い剣幕で僕を睨んでくる。
「まぁまぁ二人とも喧嘩しないで」
アルシアが「まぁまぁ」と、苦笑いをしながら仲裁に入る。
「でも実際何処なんだろうねここ」
そう言いながら不安そうに辺りを見渡す。
見渡すと言っても特にこれと言った景色の変化は無く、どこを見ても木ばかりが視界に映る。
そう僕達は森の中で迷子、もとい遭難してしまったのだ。
まぁあの時止めることを諦めた僕にも非があるにはあるのだが。
なぜこんなことになったのかは今から数十分前に遡ることになる。
────────◆◆◆◆◆◆───────
「そう言えばさ次は何処を目指してるの?」
アルシアがこちらに尋ねてくる。
明確にどこの国を目指しているかは考えていなかったため、返答に詰まってしまう。
どうせならば異世界特有の種族と出会いたい。
「そうだね…」
僕は顎に手を置きうーん…と声を唸らせる。
異世界といえばの種族で思い当たるのが多すぎて逆に悩む。
「アデラ、ここから一番近い国ってどこ?」
僕は国巡りを目的をしているアデラなら知ってるかもしれないと思い、質問を投げ掛ける。
アデラも僕と同じように少し考える素振りを見せた後、ハッとした顔をし口を開く。
「それならエルリア王国はどうだ?」
"エルリア王国"それはエルフの住まう国。
なんでもこの国は森の中にあり、と言うかほぼ森と言って良いほど自然的で正に理想の、皆の思い浮かべるエルフの国と言うような感じだそうだ。
「エルフか…いいね」
エルフもまた異世界特有の人種だろう。
僕は心を踊らせ目を輝かせる、それはアルシアもまた同じのようだ。
「私そこ行ってみたい!」
「よし。満場一致ってことで…行くぞ!!」
そう言うとアデラは森に向かって走り出す。
突然の事に僕達は目を丸くする。
一体何考えてるんだ!?
「言ったろエルリア王国は森の中にあるって」
僕の心を読んだかのように先頭を歩く男が答える。
だからって一直線に森に突っ込む奴があるか!
とは言ってもこうなってしまってはあの馬鹿を止めることは出来ないだろう、全く困った親友だ。
「ちょっと待て!」
「本当に走ってちゃって良いの!?」
僕達は走り去って行く背中に向かいそう叫びながら走り出す。
そうして今に戻るわけだが……どうしたものか。
ヘトヘトになりながら歩いていると草が折れて、道になっているのを見つける。
と言うことはここを誰かが通ったと言うことだ。
僕達は森を出られるかもしれないと思い、それはそれは明るい顔をしたながら道に沿って走り出す。
「エルリア王国か!?エルリア王国に着くのか~!?」
さっきまでの疲れきった表情とは真逆になり、とても明るく、期待に満ちた声で叫びながら走る。
しかしそんな希望はすぐに打ち砕かれることになった。
グルルルル……
「「「魔獣だぁぁぁぁ!!???」」」
僕達は一斉に叫ぶ。
道を作っていたのは魔獣だったのだ。
遭難していて全員まともな判断をせず、すぐに突っ走ってしまった事が何よりもの原因だろう。
ちょっと考えれば分かるようなことを…恥ずかしい。
しかし出会ってしまったものは仕方がない、僕達は戦闘に入るため、体勢を整える。
そんな時、すぐ近くからガサガサと草木の揺れる音が聞こえる。
さすが獣人と言ったところかその音にエピュアがいち早く気づき、音の方向に体を向け警戒する。
そうしていると出てきたのは一人のエルフだった。
「そりゃァ!!」
エルフの少女が魔獣の目を切り裂く。
痛みから悶え暴れる魔獣から距離を取り、後ろを目で確認する。
魔獣が少女に飛び掛かろうとしたその瞬間、ドスッと一本の矢が魔獣の喉を貫く。
魔獣はすぐにバタンッとその場に倒れ息絶える。
開いた口が塞がらずポカンとした顔で突っ立っている。
それは僕以外の二人も同じみたいだ。
そうしているとまたガサガサと音が聞こえてくる。
「速いよミナツ~」
振り替えるとそこには、キラキラと光るペンダントを揺らしながら、パタパタと少女の元に駆け寄るもう一人のエルフの少女が目に映る。
「ごめんごめーん」
二本の剣を持つ少女は笑いながら弓を持つ少女の頭を撫でる。
恐らく魔獣の喉を貫いたのはこのエルフなのだろう。
っていつまでポカンとしているんだ僕は!
二人はまだ状況が理解できていないのか突っ立っている。
しょうがないので僕から声をかけることにした。
「あ、あの~」
「あぁ、ほったらかしにして悪かったな。怪我とかしてないか?」
双剣の少女は心配そうな顔で僕を見る。
「僕…て言うか僕達は平気だけど」
「そうか!それならよかった!」
僕がそう答えると双剣を持つ少女はパッと笑顔になる、この人ちょっとアデラに似てるな…そんな事を考えながら僕は話を続ける。
「えっと失礼じゃなければ名前を聞きたいんだけど」
「おっと自己紹介がまだだったな、アタシは"ミナツ"んでこっちが」
「"ネフィ"だよ~」
双剣を持つ少女、いやミナツの言葉を遮り、弓を持つ少女はネフィと名乗る。
「アタシ達はエルリア王国に帰る途中だったんだ」
ミナツがそう話した時僕達三人はハッとした顔で目を見合わせる。
「僕達もエルリア王国に連れてってもらっても良いかな?」
「おっ、観光客か?良いぞ!」
ミナツはニカッと笑い応える。
こうして僕達はようやく目的の地に辿り着くことが出来そうだ。
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