11話:無茶
「ヤバすぎんだろ…」
ぽつりと呟く。
当たり一面炎で燃え盛っており、家も店も何もかも崩れ去っていた。
「やっぱり生きてたんだ二人とも」
上を見ると浮遊している彼女は体を地に着地させる。
周りには微かにだが砂ぼこりと混じるキラキラと輝く
「ねぇもう一度聞かせてよ、二人とも私と一緒に来ない?」
もう一度最初に僕達にした質問をしてくる。
僕達の事を友達と思ってくれている、それはまた僕達も同じことだ。
それでも僕達の答えは変わらない、どんなにアルシアを大切に思っていても、この答えは変えてはならないのだ。
「ごめん。僕達の答えは変えられない」
僕はそう答えるしかなかった。
「何で?私達友達なんでしょ?だったら…」
「友達だから断ってんじゃねぇか!」
アルシアの言葉を
「はっきり言ってなお前の言ってることは訳分かんねェ」
「分かんないって…私はちゃんと説明したよ?」
呆れたように笑い、不思議そうな顔をする。
だがアデラはそんなことはお構い無しに言葉を続ける。
これはきっと自分の国を造る事を目標にしている彼だからこそ、言えることだと思う。
「いいか?国を造るって言うことはなァ、国のトップになるって事だ。だからその国の奴等の事をまとめれる奴じゃねぇと出来ねぇんだよ!」
「私だってちゃんと考えてるよ!」
怒鳴る彼女に対しアデラはあっさりと言葉を返す。
「どうだか、ここの人を皆殺しにしようとしてる癖によ」
しかしアデラの声は非常に真剣な声だった。
「人?あんなのは人じゃないよ」
人じゃない。
アルシアは迷いない瞳でハッキリと口にする。
「それは一体どう言うことなの?」
僕は考えていたことをそのまま質問する。
答えは分かりきっているようなものだが、アルシアの気持ちをハッキリと聞きたい。
そう考えているとゆっくりと口を開く。
しかし話をする少女の瞳には一切の光が無く、変わりに憎悪のようなものが読み取れる……そんな虚ろな目をしていた。
「うん人じゃないよ、私の国にはあんなのはいらない」
「だからどうして人じゃなのか聞いてんだよッ」
アデラは進展の無い会話に痺れを切らしたのか、少し強めにそして呆れたように問い質す。
「どうしてって?そんなの決まってるよ……」
震える声で静かに話し続ける。
「パパとママを殺した挙げ句、最初は私の事を"神々の子"だって言ってたくせに、魔女の子だって掌返して嫌ってたんだから……」
そう話すアルシアの声は落ち着いた声いた。
しかし、どこか恐怖を覚える子供のような声だった。
大方予想どうりの答えだ。
「二人はきっと私が処刑されないためにも止めようとしてるんでしょ?」
「そこまで分かってんなら…!」
「無駄だからだよ」
アルシアがアデラの言葉に割って入る。
無駄…それはきっとこう言う事なのだろう。
「既にアルシアは処刑対象だからって事?」
「やっぱり貴方は察しがいいね」
やはりそうか、でも実際あの大災害を起こした犯人がアルシアなのだから、そうなっていても納得は出来る。
それにパパとママとはきっとあの本にも記載されていた獣人の夫婦の事だろう。
「分かった?だからもう私には破壊しかないの」
静かに呟く。
しかしこの声は今までの震えたような、どこか壊れているような声ではない。
確実に覚悟を決めている声だった。
「今度こそさようなら!」
アルシアは一気に距離を詰め、僕を狙ってくる。
元々獣人は近距離に特化型の種族だ、その力に加え魔力を持っているそんなアルシアの攻撃を喰らえばただではすまないだろう…でも。
「それは読めているよ!」
僕は少し仰け反りながらしゃがみ、アルシアの攻撃を回避する。
そうすると頭を狙ってきている腕を一気に上に蹴りあげる。
魔術を使う人間は基本接近戦が不利なことを知っているのだろう、けどそうじゃない人間だっているのだ。
身体ががら空きになった今腹に一発渾身の蹴りを決める。
「──ッ!?」
腹を蹴られたことにより少し声を漏らすと言うよりは接近戦が出来た僕に驚いているのだろう。
「凄いね、そんな動きが出来るなんて思ってなかったよ」
アルシアは余裕の表情を見せる。
個人的には目一杯蹴ったつもりだったんだけど、やっぱり獣人に効果はほぼ無いに等しいね。
「やっぱ接近戦は俺に任せろ」
アデラが割って入ってくる。
急に突っ込んで来たら危ないだろうが!
「そっちが相手なら」
少し距離をとり魔術で攻撃をしてくる。
彼女は僕達の戦闘を一度しか見たことが無く、ましてやアデラは遠くで戦っていたにも関わらず僕達がすぐに攻撃を繰り出せる範囲を理解している様子だ。
恐るべき獣人の観察力だな。
「予想以上に強いね二人とも」
「そりゃどーも」
彼は素っ気なく答える。
「やっぱり二人に対して出し惜しみはしてられないね」
地から足が離れゆっくりと宙に浮き上がる。
この感じはまたあの災害級の魔術を放つ気だ。
「止めろアルシア!君が死ぬぞ!」
あれだけの魔力を必要とする魔術をまた放とうとしているのだ、ましてやこんな短時間のクールタイムで。
しかし魔力の放出を止めようとはしない。
「おい死ぬってどう言うことだ?」
バッと顔をこちらに向け質問を投げ掛けてくる。
一度に使える魔術には限度がある、それは基本魔力を使いきればなのだが、今のアルシアは違う。
初めにあれだけ魔力を消費しているのだ、魔石を使ったとは言えもう魔力は限りなくゼロに近いだろう。
なのに超高火力の魔術を放とうとしている、それはつまりアルシアは自分の命を削ってでも魔術を放とうとしていると言うことだ。
「マジかよ!んでも止める術なんかねぇぞ」
一度手の内を見せているのだ、もうあの奇襲作戦は使えない。
ならもう仕方がない。
「一か八か、バカ正直に真っ向から打ち破る!」
「はぁ!?」
そりゃこの反応になるだろう、当然分かっていた。
「いやいや無理がありすぎるだろ!」
アデラは驚きのあまりかそう捲し立てる。
「まぁ実際無茶だと思うけど」
それにアルシアを殺したとしてもきっと魔力を爆発させ、自爆をしてくるに違いない。
殺すすつもりなんて毛頭無いのだけれど。
「それでも助けるにはこれしか…」
頭をかきむしりながらハァと大きく溜め息を着く。
さすがに無茶を言い過ぎてしまったかな。
「おいトラン、この後飯か何か奢れよ」
目をギラつかせそう言いながらこちらに少し笑みを見せる。
「うん!」
こんな無茶な作戦とも呼びがたい作戦に乗ってくれるのはアデラ位だろう、本当に頭が上がらない。
僕の考えた作戦はこうだ。
アルシアは自分の命を削りまでして魔力を溜める。
ならばできる限りそうさせないため、真っ向から突っ込んで行き直ぐに魔術を放つ以外の選択肢をなくす。
そうすることで魔力の消費量を出来るだけ減らそうと言う作戦だ。
「やるとは言ったが中々に厳しい内容だなぁ」
それは本当にごめん、もうこれしか思い浮かばなかったんだ。
僕は申し訳なさそうな顔をする。
「まぁ良いか、ちゃっちゃと終わらせて三人で飯食おうぜ!」
アデラは気合いを入れ直し迷いを振り切る。
そう言ってくれるだけでとても心が楽になったような気がした。
「ありがとう。それじゃ始めよう!」
「応!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます