第5話 妻の事情
和也が同意してくれそうだ。
綾香は、心の中でドキドキしつつ、ほっとした。相手はまだいない、と言ったが、実は、綾香には、意中の相手が既にいる。
事務員として働く印刷会社に出入りしている大手の販売印刷会社のゼナックスの営業の菊池だ。綾香とおなじ48歳。背もそこそこ高く、顔もまあまあ整っている。そこそこのルックスを補っているのが、洒落たスーツやシャツ、時計など身にまとっているものである。それが、菊池の雰囲気を高めていた。
「ねえ、佐藤さ~ん。今度、飲みに行かない?」
「また、菊池さんそんなこと言って~。奥さんに怒られるわよ~。」
「え大丈夫。大丈夫。俺、独身なんでよ。」
「あら、そうなの。でも、私は既婚者なのよ。人妻を誘っちゃだめでしょ。」
「ただ、飲みに行くだけですよ。」
「だめ!」
と軽く、いつも、いなしていた。
まったく軽く言ってくるんだから・・・・・
ある日、菊池が昼前にやってくると
「佐藤さん、お昼ラーメン一緒にどうですか。」
「え?ラーメン!」
「近くに新しい家系の店ができたんですけど、美味しいらしんいんですよ。」
「家系~か~。いいなぁ」
「じゃあ、ご一緒にどうですか。」
まあ、ラーメンくらいならいいか・・
近くなら味見しておくのも大か・・・・・。
綾香は、大のラーメン好きだった。夫の和也は、そば好きである。お互いに麵好きで意気投合したのであったが、ここしばらく一緒にラーメン屋を訪ねることも少なかった。
友人やママ友とはおしゃべりがメインなので、ラーメンと言うわけにはいかない。
菊池の誘いに乗ったのには、こんな背景があった。
「ああ。美味しかった。」
「よかった。また、付き合ってください。」
「そうね~。どうかな・・・」
綾香は、語尾を濁した・・・・。これがきっかけで2人の間が縮まっていく。
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