還暦前に、別れてみました

@shalabon

第1話 プロローグ

「どうして離婚されたんですか?」

「主人と老後を一緒に過ごすのは無理って感じたからなんです。」

日曜日のバラエティ番組テレビのリポーターに1人の熟年の主婦が答えている。


「そう、そう!そうなのよね~。」

とソファーでテレビを見ながら大きな声を出したのは、妻の佐藤綾香。48歳。中規模の印刷業者の事務員をしている。

 美人ではっきりとした顔だちをしているが、年齢を積み重ねて、お肉が腰回りについてしまっていることは気にしている。


「え?なんか言った?」

 リビングで遅い朝食を食べながら、訪ねたのは、夫の和也49歳。地元の書店に勤めている。

 書店といっても、本の小売りや外商とは違って、学校関係に学習教材を販売する課の課長である。

課長であるが、学校を回って営業をかけるのがメインである。

 長身で、顔もまあまあ整っていて、話も上手ながら運動不足は否めず、だいぶ肉も付いてきた。外回りで一日中しゃべり続けているので、家では口数がちょっと少ない。


 2人は結婚20年。長男、長女、次女の3人の子どもに恵まれ、先月、次女の光(ひかり)が短大を卒業して、就職して一人暮らしを始めた。

 この4月からは、夫婦2人暮らしとなり、和也は、慌ただしかった子育てもひと段落して、これで、夫婦でゆっくり過ごせるなぁと思っている。


 突然、綾香が和也に向きなおり言った。

「ねえ。私たち、別れない?」

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