第7話 今度は身体が壊れた

── 潰瘍性大腸炎の発症、「なんでまた…」という気持ち




入退院を繰り返しながらも作業所に通う生活が、いつの間にか10年以上が経っていた。

最初は不安だらけだった場所が、少しずつ自分の居場所になっていった。

心の病と向き合いながら、自分のペースで日々を重ねていく。

大きなことはできなくても、それなりに穏やかで、自分らしい日常がそこにはあった。


そんなある日、突然、身体の異変が始まった。


お腹の調子がずっとおかしくて、トイレの回数が増え、出血するようになった。

最初は疲れやストレスだと思っていたけれど、症状は悪化する一方だった。


病院で検査を受けた結果、医師に告げられた病名は――

「潰瘍性大腸炎」


原因不明の慢性炎症性腸疾患。

完治は難しく、一生付き合っていく可能性のある病気だという。


それは、“1万人に1人”がなると言われているような、まれな難病だった。


その言葉を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になった。

まさか、自分が――

なんでまた、自分が……。


心の病と付き合って生きるだけでも精一杯だったのに、今度は体まで自由がきかなくなるのか。

怒りよりも、ただ呆然とした気持ちが胸に広がった。


再び薬が増え、食事制限が必要になり、外出先ではいつもトイレの場所を気にするようになった。


せっかく積み上げてきた「日常」が、また崩れていくような感覚。

少しずつ広げてきた世界が、また静かに狭まっていった。


それでも、不思議と絶望はしなかった。


ただ、「またか……」と、深く息を吐いた。

静かなあきらめ。でも、投げ出したわけじゃなかった。


わたしの人生には、心の病と、そして体の病がある。

両方とも思うようにならないけれど、

それでも、「生きよう」としている自分が、たしかにいた…

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