ヤンデレるーぷ ヤンデレ彼女とヤンデレ浮気相手は地獄

@beniyuzu

第1話

「ふふふ。先輩は、なにも考えなくていいんですよ?」


 肌の感触が伝わる。

 青髪のショートカット。彼女でない女の子に、裸で抱きつかれ、キスを迫られている。


 ありていに言えば、

 浮気だ。


 でも、待ってほしい。

 俺は悪いことをしているという自覚は、ある。

 ただ……石を投げるのは、俺の言い分を最後まで聞いてからにしてくれ。


 俺の彼女は、いわゆる“ヤンデレ”だ。

 高校から付き合って、もう4年目になる。


 学生同士の恋愛としては、まあ、よく続いてる方だと思う。

 でも俺の方は、正直――だいぶ冷めていた。


「うーんと。ほうほう。この本もおもしろそう」


 電話だ。

 さながら逃○中に鳴り響くナレーションのように、自分の状況を実況してみる。意味はない。


「しおん、いまなにしてるの?」


「……言ったろ? 今日はサークルでバーベキューだって」


「でも、今、駅前に20分いるけど?」


「早く着いたから、本屋で時間潰してるだけ」


「そう。浮気じゃないのね」


「誰が本屋で浮気すんだよ。……じゃあ切るからね」


 今カノ。赤嶺あかね。

 都内の女子大に通っている。


「女子大だから浮気できないよ。安心してね」

 ――と言われたけど、そもそも俺は疑ったことなんて一度もなかった。


 赤髪ロング。キリッとした美人。

 見た目はドストライク……なんだけどな。


 俺の動向は、バッチリGPSで監視されている。

 10分、20分の違和感で、即連絡が飛んでくる。


 ――暇なの?


 付き合い始めたころは、可愛いと思っていた。

 でも、年数が経つにつれ、息苦しさの方が上回ってきた。


 何度か別れ話も切り出した。でも、そのたびに――


「しおん、なにか私に隠し事してるの? じゃなかったら、そんなこと言わないよね?」

「じゃあ、私のこと好きって言って?」


 ……こうなるともう、会話じゃない。


「……好きだよ」


「信じてあげる♡」


 理屈は通用しない。そういう相手だ。


「――あれっ、先輩! 偶然ですね」


 振り返ると、青髪のショートカットの美少女が笑っていた。

 青山そら。俺の一個下、大学二年。


 同じ写真部、同じ情報学科。

 授業の話、教授の愚痴、カメラの趣味。

 不思議と気が合って、よく話すようになった。


 お淑やかで謙虚。

 まるで、大和撫子みたいな子だ。


 我の強いあかねとは……まるで、真逆。


 そのまま俺たちは、サークルのバーベキューへと向かった。


「じゃー好きなだけ食べてくれー!」


 中学からの友人・大地が仕切っていた。

 友達の少ない俺にとって、サークルに誘ってくれたこの男には本当に感謝してる。


「先輩、お酒飲まないんですか?」


「ああ、ごめんね。俺、酒弱いんだ。すぐに酔っちゃう」


「……前に、聞いた気がします。じゃあ注意して見ておかないと、ですね」


「そらちゃんは飲めるの?」


「はい。かなり強い方です。……先輩って、お酒弱い女の子の方が好きですか?」


「いーや。俺は特に気にしてないな。じゃあそらちゃんに全部回してもらおうかな!」


「ふふっ、任せてください」


 場も盛り上がり、俺はトイレに立った。

 戻ってきて席に着いたとき――


「先輩、それ……私のグラスです」


「あれ、でもストロー刺さってたし……」


「……だ、大丈夫ですか!? 顔真っ赤ですよ?」


 すぐに、そらが大地に言う。


「大地さん、しおん先輩、お酒と間違えて飲んじゃって……。私が送っていきますね」


「あー、そっか。悪いな、そら。頼んだわー」


 そのまま、公園のベンチに移動して休憩することになった。


「ごめんね、そらちゃん。せっかくみんなと盛り上がってたのに……」


「いえいえ、私の注文の仕方が紛らわしかったですし。……大丈夫ですか?」


「んー、一杯くらいなら、なんとか」


「……ところで、先輩。LINE、交換しませんか?」


「え?」


「グループじゃなくて、個別でもお話したくて……」


「……ごめん。彼女がそういうのうるさくて。バレたらまた“浮気”って騒がれる」


「……そうなんですね。じゃあ、仕方ないです」


 少し寂しそうに笑ったあと、そらが言った。


「顔色、悪いですよ? お水、飲みますか?」


 ――そこから先の記憶が、ない。


 そして、冒頭に戻る。


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