第5話 ジャカランダ
熱帯植物園のそばにあったその花を娘は甚く気に入った様で、「宮崎に沢山あるらしい」と言い
お友達と宮崎まで行った。
しかし、花見の難しい所で
今年はまだ余り咲いていなかったらしい。
母の家で新聞に挟まる旅行のチラシを見ていたら
「熱海 ジャカランダの旅」というのが載っていた。
「娘ちゃん、これ見に宮崎に行ったんだよ。
ジャカランダって、知ってる?」私が聞いたら
「歯科大にあるのよ」と母。
「あ 写真の整理をしてた時に
絵葉書みたいのあったね」
父と母が最後に一緒に出掛けた場所は歯科大だった。
父はその帰りに転んでしまった。
歯科大のそばには
母のお母さんのお骨を(墓終い後)預かってもらっている、教会もある。
娘に歯科大の話をすると すぐに検索して
「ジャカランダの開花情報が出てる」と。
今年は6/4に開花。10日くらいで満開。
「行ってみようよ。おばあちゃんと3人で」
附属病院の前まで来ると 向こうに満開の花が見えた。守衛さんに「ジャカランダを見に来たのですが」と声をかけると、とても嬉しそうにしてくれた。
広い門が大きく開いているので、誰も守衛さんに声をかけたりしていなかったからかな。
母は「ここは清心女子だったのよ」と。
ああ、だから
教会があって、こんなに広々して
色々な木々が植えてあるんだね。
清心女子が鎌倉に移って、その後が歯科大になったらしい。
2本のジャカランダ 杉かモミみたいな木
杏子の実 ザクロの朱色の花 そして
私が見たくて仕方なかった、ねむの木が偶然あった。
昔庭にあったねむの木が大好きだった。
うちのは2メートル位しかなく
葉や花を間近に見る事が出来た。
歯科大のは5メートル位?
少し遠かったけれど ピンクの花が満開で
その優しく揺れる葉と、優しいピンクのポヤポヤした花は 40年前と同じように
穏やかで幸せな気持ちにさせてくれた。
ジャカランダも ねむの木も豆だ。
ジャカランダは花の形は違うが
葉の揺れ方はねむの木と同じで癒される。
何年か前、ハワイに行った時は コロナ後で
「この木なんの木」は見れなかったのだが
同じ種類の木は沢山あり 花が咲いていた。
(ハロウィンの頃)
花の色は赤いんだけど「これは‥豆じゃない?」
「ママは何でも豆豆って言うんだから」となぜか娘に嫌そうに言われたが、豆は豆でしょ。
あの花の形が好き。
コマーシャルと同じ鳥も沢山来ていた。
母は落ちていた杏子の身を拾い
「泥棒って言われるかしら」と言いながら
かばんに詰めていた。
下に落ちた杏子なんて 捨てられるだけだからきっと大丈夫でしょう。民家だと怒られる事もあるとは聞くが。
帰ると早速、母は杏子ジャムを作った。
砂糖を入れただけのそのジャムは
他のどんな食べ物よりも おいしかった。
鮮烈な味に
嬉しそうに杏子をかばんに詰め込む母
という、スパイスが効いていた。
また来年も、見に行けたら良いね
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