ある女のある人生のある散文

わに

第1節 再起動

夜の街は綺麗だ。凍える寒い夜も、うだるような暑い夜も、街灯と遠くを走るヘッドライトとまばらな家屋の明かりで煌めいている。

暗い部屋の窓辺でキザに煙を燻らせて、ぼんやりと眺めていると、すべてが煙に乗って消えていくような、そんな気がした。

朝、目が覚めたその時から積もっていった、嫌な感覚も、感情も、煙と風と涙に溶け込んで夜の街に染み込んで消える。

朝の忙しなさも昼の穏やかさも悪くはないけれど、夜の冷たさは素敵だ。

ただ綺麗なだけで私に見向きもしないけれど、すべてを見逃してくれる。許してくれる。

主役ばりのスポットライトも浴びせてこない。

所詮私は観客なのだ。

煌めく夜空のステージを眺めるだけ。

指先の火種を潰せばステージは終わり。

暗い部屋の中で幕を下ろし、また忙しない朝を迎える。

次の幕開けを頼りに、生きたくもない今日も、生きていく。

きっと今日の夜も、私を見守りながら煌めいてくれるだろう。

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